まるで子供のいたずらのように突拍子もなく、日高にも夏が来た。穏やかな四季の移ろいの情緒をまるで感じさせてくれないこの地の気まぐれな気温変化には、身も心もほとほと参ってしまう。
さて、気候とは裏腹に淡々と流れていく
門別競馬場のシーズンは、三冠競走の最終戦であるこの
王冠賞をもって開催の折り返し地点となる。三冠馬誕生の可能性がある本年は、ここでまさにひとつの
ピークを迎えると言えるだろう。
三冠制覇が如何に稀なものであるかは、歴史が物語っている。中央・地方関係なく、この可能性が高いと目された馬がよもやの敗戦を喫した例は数知れない。ホッカイドウ競馬においても然りだ。十分な実力と資質をもって、史上6頭目の偉業に挑む
ラッキードリームにも、どんな試練が待ち受けているか分からない。先に触れた急激な気温上昇が、馬のコンディションに及ぼす影響も少なくないだろう。
ただ、一冠目の
北斗盃から、三冠馬たり得るものとしてこの馬に本命を打ち続けてきた筆者は、信念を曲げるつもりはない。能力の高さは当然ながら、この馬の真価は、
JBC2歳優駿で見せたような、厳しいレースの中でこそ輝く勝負根性だ。勢いのある転入馬が参戦し、締まった流れも見込まれるが、むしろそれは望むところである。新たな歴史が刻まれる瞬間を見届けたい。
最大のラ
イバルは、
北斗盃、
北海優駿と2着を続けた僚馬リーチであろう。
北海優駿で2000mをこなした要因は、スタミナを問われるレースにならなかったことが大きいが、ゴール前まで渋太く抵抗したのは地力の為せる業である。1800mへの舞台替わりが評価を落とす要素にはならない。
単穴評価は不要。連勝中の転入馬の伸びしろにも見どころはあるが、厳しいレースの経験値を重視したい。よって、遅まきながら素質を開花し始めた
クラウォー、短距離で決め手を磨いてきた
シンタロウ、道中のリズムさえ崩さなければ巻き返せる
テイクアターンを相手とした。
(文:競馬ブック・板垣祐介)