2年ぶりに有観客で行われた第16回
ヴィクトリアマイルの出走馬は18頭。
ゲートが開くと、17番
スマイルカナ、18番
レシステンシアといった外枠の馬がまず前に出たが、3番
クリスティがそれらをかわしてハナに立った。
圧倒的1番人気に支持された
クリストフ・ルメールの
グランアレグリアは、先頭から5、6馬身離れた中団の外目につけている。
「彼女のスタートはそんなに速くない。ミドルポジションになりました。外のほうに行けたので、ポジションも、馬のリズムもよかったです」とルメール。
クリスティが先頭のまま3、4コーナーを回り、直線へ。
ラスト400mでもまだ
クリスティが先頭をキープしている。
すぐ外から
スマイルカナと
レシステンシアが並びかけて行く。
グランアレグリアはそれらから3、4馬身後ろの外にいる。ルメールの手の動きは、軽くエンジンを吹かす程度で、まだ
ゴーサインを出していない。
ラスト300m付近で、
武豊の右ステッキを受けた
レシステンシアが先頭に躍り出た。
ルメールの手の動きが速くなった。
グランアレグリアは手前を左に戻し、加速しながらラスト200mを通過した。
「素晴らしい手応えでした。直線では外に出して安全に乗った。自分から馬銜を取りましたし、自分から
ギアアップしてくれました」
そう話したルメールが左鞭を入れると、
グランアレグリアはさらに末脚を伸ばし、見る見る後続を引き離して行く。
グランアレグリアが2着を4馬身突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。
1分31秒0の勝ちタイムで、GI5勝目をマークしたと同時に、古馬マイルGI完全制覇の偉業を達成した。
「彼女は自分の能力を見せてくれた。今日は違うレベルでしたね」
ルメールがそうコメントしたとおり、ケタ違いの強さだった。しいて勝負の分かれ目はどこだったかというと、ルメールが、前が壁にならない外目を安全に誘導できるポジションを取ったところか。
まさに圧巻。今後がさらに楽しみになる一戦だった。
(文:島田明宏)