一般のファンには伝わりづらいかもしれない。それでも3回東京2週目から、トレセンの雰囲気は一気に“ローカルモード”へと突入する。GIの緊張感や気温の上昇も関係するのだろう。開催場所が替わるわけではないのだが、例年、人の振る舞いやサラブレッドの
テンションが一気に変わり始めるのだ。
調教終了後に厩舎で関係者とビールを飲み交わして夏を“熱く”乗り切ったのは、思えば当方がまだトレセンに来たばかりの若かりしころ。それだけに今や夏競馬を気温でしか感じられないのは少々残念でもある。
さて、競馬には「夏は格より調子」の格言があり、今週のGIII
エプソムCにもいかにも夏モードらしいデータがある。それは馬の“鮮度”が極めて重要な
ファクターであるという点。過去10年で4歳馬が7勝、連対に至っては実に13頭を数えるのだ。今年も傾向通りなら
アドマイヤビルゴ、
アルジャンナなど4歳勢に分があるのだろうが…。当方が注目するのは“隠れ若馬”
セダブリランテス。年齢表記は7歳のベテランホースだが、今回がデビューから9戦目。キャリアは前出2頭に次ぐ少なさである。
「これまで骨折や脚部不安などで、延べ2年半以上の休養を余儀なくされた馬。使い込めないのはネックだけど、馬体や身のこなしを見ても分かる通り、とても7歳馬には見えないよ。1週前だって抜群に動く
シュネルマイスター(
NHKマイルC馬)に食い下がっているんだからね」
こう話すのは
手塚貴久調教師。1年3か月半ぶりの実戦となった前走・
六甲Sは6着止まりも「ベストとは言えない距離(千六)で勝ち馬を追いかけるきつい形。それでもギリギリまで頑張れたのは地力の証し」と指揮官は振り返る。脚部不安で長休明けの前走時は脚元を考慮して坂路中心の調整だったが、この中間は南ウッドコースでもしっかりと負荷をかける万全の臨戦過程。主戦・
石川裕紀人も手応えと意気込みをきっぱりと伝える。
「破格に動く相手だけに1週前は見劣りましたが、前走時より馬はいいですよ。ひと叩きした上積みは小さくないと思います。順調に使えない体の弱さはあるけど、僕としてはGIでもやれていい馬だと思っていますから。先が広がる結果を出せれば」
付け加えれば、夏競馬は若馬のみならず若手騎手の飛躍の舞台。今週末は現状に満足しない人馬の“熱い”プレーに注目しよう。
(美浦の夏男・山村隆司)
東京スポーツ