恥ずかしながら明かせば、善戦ホースは底力に欠ける、とビギナーのころから長らく思い込んできた。この認識を変えたのは、今から20年前の競走馬
ステイゴールドである。4歳時に
天皇賞・春→
宝塚記念→
天皇賞・秋とGIで2着3回の好走も、3勝目を挙げて以降は実に28連敗。名脇役こそが立ち位置たる思いを強く抱くに至ったが、その認識を変えたのが3歳時の
ゴールデンホイップT以来改めてコンビを組んだ
武豊だった。6歳の
目黒記念で待望の重賞初制覇を遂げると、現役ラストの7歳時に
ドバイシーマクラシック(当時G2)、
香港ヴァーズと国際級G1を堂々2勝。底力を欠くのではなく、馬が勝ち方を知らなかった。そしてそれをレクチャーしたのが名手であることを思い知らされたのである。
さて、こんな古い思い出を記したのは理由がある。今週の
宝塚記念(27日=阪神芝内2200メートル)に出走する
カレンブーケドールは、2着3回を含めてこれまでGI6戦でオール掲示板確保。にもかかわらず3歳春の
スイートピーS以降は10連敗中と、まさに“令和の
ステイゴールド”状態にある。ゆえに陣営も長らく組んだ
津村明秀とのコンビを解消。その後は
池添謙一→
松山弘平→
戸崎圭太と鞍上を替えて勝利へのピースを探ってきた。だが勝てない…。やはり勝つための何かが決定的に欠けているのか。こんな問いに答えたのが、担当の中村雄貴助手である。
「詰めが甘いと言われればそうかもしれません。ただ、緩いペースで後方待機、控えてほしい流れで先行するなど、競馬がかみ合っていないことも多々あるんです。ハミをかみ通しだった
有馬記念(5着)ほどではないにせよ、前走の
天皇賞・春(3着)も抜けるところがなかった。要は馬が真面目なんですよね。ただ崩れていないのは地力があればこそと思うし、今回は気持ちが入り過ぎないことを意識して調整してきました。歯車がかみ合えば…ですよね」
根幹距離でない舞台が影響しているのか、
宝塚記念はここがGI初勝利という馬が過去に何頭もいる。近20年では01年
メイショウドトウ、02年
ダンツフレーム、08年
エイシンデピュティ、11年
アーネストリー、18年
ミッキーロケット…。いずれも善戦マンの域を出なかった馬たちだ。
「毛ヅヤもいいし、体調は前走よりさらに良くなっていると感じます。前走も道中
リラックスして走れたわけではないので。内回りの二二はプラスと捉えていますし、どこかでタイトルを取らせたいですね」
こう語った戸崎圭も今回は連続騎乗(通算3度目)。問われる適性が過去の舞台と違うなら…。“令和のステゴ”たるべく、鞍上の新たな味付けで大輪を咲かせるシーンもあっていいだろう。
(美浦のグッバイ野郎・山村隆司)
東京スポーツ