その才能が大きく花開いているアスリートには「末っ子が多い」と言われているそうで、今をときめく大谷翔平や大坂なおみも末っ子なんだとか。
もちろん、偉大なアスリートの中には弟妹を持つ人も当然おり、記者が少年期に夢中になっていたラグビーの例を挙げると、新日鉄釜石と日本代表で長く
スタンドオフを務めた松尾雄治、明治大学の主将として大学選手権制覇に導き、世界選抜にも選出された吉田義人には弟さんがいた。
それぞれトップチームで出場していたのだからやはり優れた
プレーヤーだったのだろうが、偉大な兄の陰に隠れて世間の印象は薄まりがち。どんな世界でも「きょうだいでトップを張る」のは至難の業なのだろう。
昨年暮れの
中日新聞杯で
ボッケリーニが勝利した瞬間、中京競馬場の記者席が何とも言えないどよめきに包まれたのは、その力強い勝ちっぷりからだけではない。その偉大な兄
ラブリーデイは5歳1月の
中山金杯で重賞初制覇を果たした後、その才能が本格的に開花。
夏から秋にかけて、
宝塚記念と
天皇賞・秋を含む重賞4連勝を成し遂げたことはよく知られている。兄とほぼ同時期の4歳12月に重賞タイトルを奪取し、本格化への第一歩を踏み出した“運命的な符合”に対しての驚きと喜びの声が前述の記者席の反応だったように思う。
レース後の池江調教師も「兄は年が明けた
中山金杯くらいから本格化したからね。この馬は半月くらい早いけど、兄の足跡をたどるような活躍を見せてほしい」と寄せる期待の大きさを隠すことはなかった。
ボッケリーニを担当する山元助手は兄
ラブリーデイのかつての担当でもある。重賞初制覇から秋の盾奪取まで、すさまじく充実した期間について「
宝塚記念の時点では本当にGIホースになれるか半信半疑のところはありましたけど、アク
シデント(1番人気の
ゴールドシップがゲートで立ち上がり、大きく出遅れる)があったりして、ラッキーな形でGIを取れました。ただ、その後の
京都大賞典の勝ちっぷりがすごかったのもあって、天皇賞は多少、自信もありましたけどね」と当時を振り返る。
「
ラブリーデイはとにかく真面目な馬で、競馬では自分の能力を全て出し切ってくれました。そのあたりは
ボッケリーニもよく似ていますよね」と続けた山元助手。そう、気になるのは兄弟の共通点。それが
ボッケリーニの今後の成長を占う重要な
ファクターとなろう。
「気持ちが強過ぎる部分があって、扱いが難しかった兄に対して、普段はヤンチャでも、乗りやすくて融通が利くのが弟ですかね」
ヤンチャ=幼さ。これはデビューが3歳2月までズレ込んだことに起因しているそうだ。
「すごく似通った成長曲線を描いていると感じてはいるのですが、2歳時に休んでいてデビューが遅れた分、(成長曲線が)後ろにズレている感じかな。実際、前走(
新潟大賞典5着)も少し幼い部分を出したけど、
ラブリーデイも4歳の時はそんなレースをしていましたから」
つまり、本格的に成長曲線が急激な上昇カーブを描き始めるのは、まさにこれからなのだ。
「
ラブリーデイは少し背中が硬かったし、かかっていくようなところもあったのに対して、
ボッケリーニは促して行くくらいなんだけど、気持ちの強さはある。
バランスのいい走りをするのが特徴ですかね」
偉大な兄に勝るとも劣らない素質を持つ
ボッケリーニ。GIII
中京記念(18日=小倉芝1800メートル)こそが、真の快進撃の始まりとなるかもしれない。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ