2年ぶりの「夏の甲子園」。2日目(11日)には春夏通して甲子園初出場の東北学院(宮城)が、強豪・愛工大名電(愛知)に快勝。伏兵扱いは東北学院関係者には失礼に当たるかもしれないが、「番狂わせ」こそスポーツの醍醐味だと思い込んでいる私にとっては最高のご馳走をいきなりいただいた気分だ。今夏も球児たちの熱い戦いから目が離せない。
競馬における最近の番狂わせといえば、先月4日の
CBC賞が挙げられる。「8番人気の伏兵」
ファストフォースが1分06秒0という驚異の
JRAレコードで逃げ切り勝ち。前日に記録された1分06秒4のレコードをわずか1日で塗り替えてみせた。当然、GIII
北九州記念(22日=小倉芝1200メートル)では“もう伏兵とは呼ばせない”走りが期待されるわけだが、
ファストフォースのここまでの競走生活は決して平坦なものではなかった。
デビュー後、少ししてから担当を引き継いだという下川助手は「デビュー戦(12着)の芝2400メートルはさすがに長かったんだろうね」と苦笑するが、適条件を求めた試行錯誤はその後もしばらく続き、4歳時には地方(門別)に活路を求めたほどである。
「地方ではさすがに能力が違ったけど、爪が浅い馬だから本質的にダートは向かない。向こうの厩舎もよく勝たせてくれたし、馬もよく頑張った。そのころの経験が今に生きているんだと思うよ」(下川助手)
再転入後は1勝→2勝クラスを連勝。門別での苦労が実を結ぶ形に。そして3勝クラス2戦を挟んだ後の格上挑戦・
CBC賞で前述通りのレコード勝ちを決めてみせた。
「高速馬場で初ブリンカー。“思い切って行ってくれ”と鞍上には伝えていた。ハンデ(52キロ)も軽かったからね。すべてがかみ合った勝利」とは西村調教師。補足するように下川助手は「3勝クラス初戦の
長篠S(6着)で外からかぶされて、モマれたことがかえって良かった気がする。(
CBC賞では)鞍上が行き切ってくれて正解だったし、ブリンカーも効いてくれた」。そう、
ファストフォースの“形”を明確にしたことが、快勝につながったのだろう。
レコード勝ちを演出したパートナーの鮫島駿は前走が初コンビ。それも競馬が正真正銘の初騎乗で「返し馬からの15分でこの馬を知れるように気を配りました」と当時を振り返る。
「松山先輩からも話をうかがってましたが、ズブそうな印象だったし、あの高速馬場に対応できるか疑問だったのでゲートからしっかり押して行った。条件がかみ合ったこともありますが、終わってみれば能力が高かったってことですね」
重賞連勝を狙う今回は「GI馬も出てきますし、同じような競馬は難しいでしょうが、前々で運べればハナにはこだわらなくてもいいかな。秋に向けてどんな競馬ができるか楽しみです」と目を輝かせる。
秋への試金石となる一戦で、
ファストフォースがどんな走りを見せてくれるのか。これで
スプリンターズSを有力馬の一頭か、それとも伏兵の一頭として迎えるのかが決まる。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ