東京2020オリンピックでは兄妹で金メダリストに輝いた
阿部一二三・詩が話題になったが、ブラッドスポーツの一面を持つ競馬では「兄弟姉妹」という血統面は人間界以上に重要な要素。セリや生産界でも大きなウエートを占める部分であり、我々記者にとっては調教などで強調材料はなくても「○○の弟」というだけで原稿にできる便利なキーワード(笑い)でもある。
まあ、馬にとっては偉大な兄だろうが賢弟だろうが、おそらく知るすべもなく、「○○の弟妹」だからというプレッシャーは人間サイドだけのものだろうが…。とにもかくにも今週の競馬にも“兄姉の背を追う”馬たちがスタンバイしている。
土曜(28日)小倉のJ・GIII
小倉サマージャンプに出走する
コウキチョウサンは歴史的障害王者
オジュウチョウサンの全弟。兄の背中は偉大すぎるが、経験を積みつつ徐々に力をつけてきた。
「襷やバンケットのあるコースは得意だし、前走(障害OP5着)もここを見据えて小倉を使いました。ここ目標に順調ですね」と兄も管理する和田郎調教師は期待を寄せる。主戦・石神が小倉に滞在して調教をつけるなど勝負モードだ。重賞初Vを決め、暮れの大舞台・
中山大障害で偉大すぎる兄との初対決なるかに注目だ。
さらに
新潟2歳S。重賞クラスだけあってか活躍馬の弟妹は多いが、当方が注目したいのは
クレイドル。ひとつ上の兄
ステラヴェローチェは不良馬場の
サウジアラビアRCで重賞初Vしたと思えば、高速決着の
朝日杯FSで2着。距離未知数だった
皐月賞→ダービーでも連続3着と今年のクラシック戦線でも底知れぬ不気味さを残し、まさに「奥が深い」という表現がピッタリだった。その妹
クレイドルに関して黒岩調教師は「予想以上に成長している。早熟傾向かなとも思っていたけど、競馬を経験した後は“奥がある”と感じている」。当方が兄に抱いた「奥深さ」は同じく
クレイドルにも当てはまる可能性も。
競馬の魅力のひとつは血のドラマ。これらの馬たちが見事勝利を収め、兄たちの背中に追い付くための一歩を踏み出せるか注目したい。
(クジラの弟・山口心平)
東京スポーツ