12頭の出走馬がゲートを飛び出した。
1番枠から出た
川田将雅の
セリフォスは、やや遅めのスタートとなった。そこからジワッとポジションを上げ、中団の内を進んだ。
「装鞍所から
テンションが高くて、そのぶんゲートのおさまりが悪く、出がよくなかったので、あの位置になりました」と川田。
2番人気の
オタルエバーが押し出されるようにハナに立った。
クリストフ・ルメールが乗る1番人気の
アライバルは、
セリフォスと対照的に速いスタートを切ったのだが、今ひとつ行き脚がつかず、少しずつポジションを下げて、
セリフォスより後方の位置取りになった。
3コーナー手前で、
セリフォスは内からスルスルとポジションを上げ、先頭を5馬身ほどの射程にとらえたところで、また馬群のポケットにおさまった。
オタルエバーが引っ張る馬群は3、4コーナーを回り、直線に向いた。
オタルエバーが快調に飛ばし、1馬身半ほど遅れて
コムストックロード、
タガノフィナーレらがつづく。
セリフォスは、そこから3馬身ほど後ろの内にいる。
ラスト400m手前で、
セリフォスの少し前の内にいた
キミワクイーンが、鞍上の
ミルコ・デムーロの右鞭を受けながら内に切れ込んできた。
川田は、
セリフォスを、
キミワクイーンの内に誘導した。
「返し馬でも、ポケットで歩いているときも、今日は馬が左に行きたがっていたので、枠も枠ですし、内の馬場はよくなかったのですが、内を気持ちよく走らせました。馬場をこなしてくれるという自信はありました」
そう振り返る川田の叱咤に応えて
キミワクイーンを競り落とすと、ラスト200m付近で、今度は
オタルエバーが切れ込んできて、外から併せられる格好になった。
オタルエバーの
幸英明は右ステッキを入れていたので、闘争心を引き出すため、あえて併せに行ったのだろう。
しかし、併せ馬の形になったのは7、8完歩だけだった。
セリフォスが
オタルエバーを競り落としてさらに伸び、
アライバルの追い込みも封じて、先頭でゴールを駆け抜けた。
「前半はあまりいい流れではなかったのに、こうして勝ち切れたのは能力の高さだと思います」と川田。
父の
ダイワメジャーは、スパッと切れる脚がないかわり、競り合うと恐ろしいほどの強さを発揮した。その父譲りの勝負強さと、父以上の切れ味を引き出した川田のエスコートで、見事、連勝で重賞を制覇した。
(文:島田明宏)