暑い、暑過ぎる。こんな時はプールにザブンと飛び込んで、暑気払いのひとつもしたくなる。冷たい水の中をスイスイ泳げば人間だって気持ちいいのだから、サラブレッドも夏場のプール調教は大歓迎だろう…なんてことを考えながら、炎天下の栗東トレセンを取材で歩き回っていると、思いがけない話を耳にした。
「プール? 毎年、この時期は定期メンテナンスでお休みだよ」
教えてくれたのはGIII小倉2歳S(9月5日=小倉芝1200メートル)にエントリーしている
インプロバイザーを担当する濱田助手。夏といえばプールなのに…と思ってしまうところだが、そもそも栗東トレセンにあるのは温水プールなのだそう。シーズンを問わず、トレーニングに利用されるため、函館、札幌の北海道シリーズ滞在などでトレセンに比較的馬の少ない夏場が点検保守を行うには最適なのだそう。
さて、そのプール調教のメリットといえば、脚元に負担をかけずに、効果的に心肺機能を高められることが挙げられる。
インプロバイザーも点検に入る直前の7月末まではプール調教を積極的に利用していたようだ。
「一時はソエが出ていたけど、プール調教のおかげで脚元がスッキリした。今はもう(ソエを)気にすることなく走れているし、体も前回以上に締まってきた感じだね」と濱田助手。
ちなみに、人と同じく馬にも泳ぎの得手不得手があり、
インプロバイザーの場合は「泳ぎがうまい。4つの脚をちゃんと使ってかき込んでいるからね。水の中でも全身を上手に使えているってことは、走りの
バランスもいいってことなんだ」。濱田助手はその巧みな泳ぎからも身体能力の高さを感じ取っている。
プール調教は精神的にもいい影響があるとか。人間が利用するプールと違い、サラブレッド用のものは幅員が狭い。そういう場所に慣れることで「ゲートの中でも落ち着きやすくなる」効果が見込めるそうだ。
取材の最後に“2歳馬の調整で気をつけていることは?”と聞くと「あまり気負わせないよう、ゆったりした馬づくりを心がけている。入念に、丁寧に乗り込むことかな」と濱田助手。
プール調教も取り入れて、さらに成長した
インプロバイザーには、残暑を吹き飛ばすような爽快な走りを披露してもらいたい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ