「俺がジョッキーとして初めてGIに出たのも
スプリンターズSだったんだ」
懐かしそうにこう話してくれたのは
レシステンシアの調教パートナーを務める河北通助手。
メルシーステージとのコンビで重賞2勝を挙げるなど、1991〜2009年まで騎手として活躍して
JRA通算205勝、あの
ナリタブライアンを新馬戦(
ロングユニコーン)で負かしたこともある腕利きだ。
その河北助手が
ロングキャロットとのコンビで出走した思い出の93年
スプリンターズSは、今や「ウマ娘」の学級委員長としても人気が再燃している「伝説の電撃王」
サクラバクシンオーが初のGI制覇を果たしたレースでもある。
「あの馬は体つきがまるで違っていて。ムキムキの筋肉質で、1頭だけボディービルダーが交じっているようだった。(両手を広げながら)トモだってこんなに大きかったんだから。あれだけのいい体を持っていたから、種牡馬としても成功したんだろうね」
そして今、
サクラバクシンオーに負けないくらい立派なトモを持った馬が河北助手の目の前にいる。
レシステンシアだ。同馬のトモの強さを伝える一例として、こんなエピソードがある。
「入厩したての2歳馬は普通、乗っていて頼りなさがあるものなんだ。だけど、この馬は来た時から乗り味が違っていた。(2歳馬の)ゼッケンを着けていなかったら、古馬の男馬だと勘違いするくらいに」
そんな若駒離れした馬体を日々の鍛錬で磨き上げ今、
レシステンシアは実りの秋を迎えている。
「稽古をしていると、他の厩舎の人から“トモがすごいですね”ってよく声をかけられるんだ。自分が馬に乗っている時はお尻を見れないんだけどね(笑)。下りて馬を眺めていると“あ〜やっぱりすごいな”って感じるよ」
もちろん、
パワーアップしているのはトモだけではない。
「前走で100に近いところまでは仕上げていたとはいえ、使えば上積みは必ずある。だから今回は100にとどまらない、それ以上のデキでと思っているんだ」
究極の仕上げに向けては馬体の回復が大きなポイントとなる。
セントウルS当週が516キロ(輸送前)に対して、先週時点で522キロと体重が増えているのは、守りに入らない調整が可能であることを意味している。
最終追いに騎乗した河北助手は「馬場はいつもより重く感じたけど、その中でも
セントウルSの最終追いの時とほぼ同じラップで走ることができた。使った効果で下腹がシュッとしてきたし、行きっぷりも良くなっている。いいと思うよ」。
ス
プリント界制圧へ、ムードは最高潮――。“令和の
バクシンオー”
レシステンシアが、秋の中山で新たな電撃王伝説の幕を開ける。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ