同じ良発表でも、雨が降った先週の日曜日よりずっといい状態だった東京芝コースに、
アルゼンチン共和国杯の出走馬15頭が飛び出した。
1番人気に支持された
クリストフ・ルメールの
オーソリティは速いスタートを切った。正面スタンド前で外の
ボスジラと
アンティシペイトを先に行かせ、好位の3、4番手につけて1、2コーナーを回って行く。
「すごくいいスタートをしましたから、すぐに前のほうにつけた。3番手で馬の後ろにいて、だんだん
リラックスすることができました」とルメール。
ボスジラが引っ張る流れはスローになり、ターフビジョンに表示された1000m通過は1分3秒4。
オーソリティはやや行きたがっていたが、ルメールが拳を下げて握った手綱をガチッと抑え、ポジションをキープしている。
「レース前は、ちょっとペースが遅くなるのではと心配でした。でも、
オーソリティは心身ともに充実しており、道中、冷静に走ってくれた。向正面でいいポジションだったので、勝つ自信がありました」
そう話したルメールは、この馬や
ウオッカのように、大きなス
トライドで行きたがる馬を、
パワーとテクニックで抑えることにかけては天下一品だ。馬とケンカせずに、ギリギリのところで折り合わせ、脚を溜めた。
いつでも前をつかまえられるポジションと手応えを保ったまま3、4コーナーを回り、直線へ。
ラスト400m手前で前が開くと、ルメールは早くも仕掛けた。昨年このレースを制したときより3.5Kg重い57.5Kgのハンデを考慮してのことだろう。
ルメールの
ゴーサインを受けた
オーソリティは、コーナーを回ったときと同じ左手前のまま楽に抜け出し、1完歩ごとに後ろとの差をひろげて行く。
ラスト200mを切って完全に抜け出してからようやく手前を右にスイッチし、2着を2馬身半突き放してゴールを駆け抜けた。
「直線に入ってからすごくいい反応をしてくれた。いい脚で抜けてくれた。よかったです」とルメール。
同じような勝ち方をした昨年も、直線で何度か手前を替えるなどギクシャクしたところはあったが、それも今回同様、休み明けだったからか。ルメールの完璧なエスコートで連覇を果たした今年は、間違いなく、昨年より強い勝ち方だった。
(文:島田明宏)