記者の名前は「西谷」なのだが、トレセン関係者からは「三谷さん」と呼ばれることが少なくない。理由は単純明快。脚本家の三谷幸喜に似ている(らしい)からである。たとえば杉山晴厩舎の野坂助手は朝、顔を合わせると「おはようございます、三谷監督!」と馬上からいつも声をかけてくれる。それだけにNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の評判が気になるところ…って話じゃなくて。その野坂助手が担当している馬こそが今回の主役である。
ブルベアイリーデはこの時期の2年前、東京1400メートルのGIII根岸Sを選択していたのだが、今年はGII東海S(23日、中京ダート1800メートル)へとかじを切った。
「もともと自由自在にコントロールの利く馬だからね。距離に融通性の出た今なら1600~1800メートルくらいが一番競馬がしやすいんじゃないかな」と野坂助手は待望の重賞初Vへ向けて好感触をアピールする。
もちろん、中間の動きも文句なし。13日の1週前追い切りでは坂路4ハロン49.9-12.8秒の超抜時計をマークするなど、気配の良さがストレートに伝わってくる。
「(稽古で)一杯にやったのは史上初じゃないかな。動くのは分かっているから、いつも2ハロンくらいしかやらないんだけど、今回の1週前追いは“ビッシリやってくれ”との指示。状態もめっちゃいいので“やってみましょうか”となったんだ」
野坂助手の期待に応える走りで自己ベスト更新&その日の一番時計を叩き出したのだから、今はよほど具合がいいのだろう。その要因について野坂助手は「放牧から帰ってきたら、いつもは緩いところがあるんだけど、今回はそれがまったくなかった。戻ってきた時からエンジン全開。普通はどうやって上げていこうかってなるんだけど、今回はどうやって維持しようかって、そっちのほうが心配で(苦笑)。まあ、それだけ調子がいいってことさ」とうれしい悲鳴。
武蔵野S4着以来、2か月の休み明けでも、「馬は絶好調」とキッパリだ。
そんな
ブルベアイリーデには、もうひとつ調子のバロ
メーターがある。
「競馬モードに入ると、馬が隣に寄ってきたら耳を絞って威嚇しにいくんだ。すごく分かりやすいよ。“また始まったな”って。逆にそれがなかったら不安になるくらいの馬だから」
まさに体調、気力ともに
マックス。となれば「道中うまくなだめて、最後にこの馬の能力を引き出してくれる。やっぱりうまいよね」と野坂助手が信頼を寄せる
M.デムーロが、念願の初タイトル奪取に導いてくれるのでは。
「東海Sの16頭」では
ブルベアイリーデの走りにぜひ注目してほしい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ