トーラスジェミニがハナを切り、
ケイデンスコール、
ヴェロックス、
ディアンドルらがつづく。1番人気の
ファインルージュは少し遅れた馬群のなかにいて、2番人気の
カラテはさらに2馬身ほど後ろの中団にいる。
田辺裕信が乗る4番人気の
イルーシヴパンサーは、先頭から10馬身近く離れた後方2番手に控えた。田辺が描いていたレースプランよりは後ろの位置取りだったという。
「(好位につけた)前走がいい競馬だったので、中団くらいを取れるといいかなと思っていました。それでも、折り合いなどに課題がありましたし、リズムを一番に考え、深追いせず、じっとしていました」
トーラスジェミニが単騎先頭のまま3、4コーナーを回って行く。直線に向いても、
イルーシヴパンサーは後方2番手のままだった。田辺は迷わず外に進路を取り、軽く
アクセルを吹かすようにしながら
カレンシュトラウスの外に持ち出し、左ステッキを入れた。
内埒沿いで粘る
トーラスジェミニに、外から他馬が襲いかかる。
ラスト400mを切ったところで
ケイデンスコールが
トーラスジェミニをかわして先頭に躍り出た。その内から
ディアンドル、外からは
ドナアトラエンテも伸びてくる。
ファインルージュと
カラテはどちらも手応えがあるのだが、前が壁になっている。
各馬が横に大きくひろがり、
ファインルージュと
カラテの前もひらけた。ラスト200m付近で、
ファインルージュが馬の間から伸びてきた。しかし、大外を通る
イルーシヴパンサーのほうが脚色がいい。
イルーシヴパンサーは1完歩ごとに
ファインルージュとの差をひろげ、最後の数完歩は流すようにして、重賞初制覇を遂げた。1馬身3/4差の2着は
ファインルージュ、さらに首差遅れた3着は
カラテだった。
「一戦ごとに成長を感じていましたが、あんなにあっさり差し切ってくれたのには、ぼくもびっくりしました。もともとカッとする馬だったのですが、落ちついて挑めるようになってきました。また一線級の相手と戦えるようになったので、本当の勝負はこれからだと思います」と田辺。
後方から大外という、馬への信頼と自信を感じさせる騎乗で馬の力を引き出した。
2着の
ファインルージュと3着の
カラテは、直線でもう少しスムーズに走ることができていれば差は詰まっていたかもしれないが、
イルーシヴパンサーを負かすところまでは行けなかったのではないか。今回に関しては、
イルーシヴパンサーの完勝だった。
これで
イルーシヴパンサーは4連勝。強い4歳世代から、また1頭、楽しみなマイル王候補が現れた。
(文:島田明宏)