春は旅立ちの季節だ。2月末、東西の調教師が引退する。長くもあり、短くもあったトレーナー人生-。刻一刻と迫る最後の週末に向けて、胸の内を語った。
引退を目前に控える浅見師の目には、一点の曇りもなかった。「長くやらせてもらいました。面白い仕事でした。周りの人にお世話になったし、有り難かった」。歩んできた競馬人生を振り返り、かみしめるように言葉を紡いだ。
92年の開業後、21年間で665勝を積み上げた。98、18年の
天皇賞・春を
メジロブライト、
レインボーラインでV。06年
菊花賞を
ソングオブウインドで制すなど長距離戦線で活躍した馬が目立つ。それでも、師にとっての特別なレースは03年
阪神JFだという。
単勝6番人気の
ヤマニンシュクル、同10番人気の
ヤマニンアルシオンが、世間の低評価を覆し、堂々のワンツーフィニッシュ。「きのうのことのように思い出します。同一馬主でね。母系もいい馬で、自分で選んできて、(馬主に)お願いした馬だった。思い入れ深いです」。懐かしさとうれしさを込めて語る。
水曜の調教では自ら騎乗し、栗東坂路を駆け上がった。「救急車が来たら迷惑が掛かるから、必死につかまった」とおどけるが、ケイコをつけたのは愛弟子の鮫島駿が土曜小倉2Rで騎乗する
ヤマニンサルバム。「もうひと皮、ふた皮むけたら国内でも指折りの騎手になると思う。ずっと応援していくつもり」。これも浅見師なりの最後の愛情表現だろう。
「コ
ロナが終わって、落ち着いたら競馬場に足を運んで歓声を上げたいね」。調教師人生に別れは告げるが、競馬への思いはこれからも変わらない。
◆浅見師・戦歴 98年
天皇賞・春=
メジロブライト、03年
阪神JF=
ヤマニンシュクル、06年
菊花賞=
ソングオブウインド、08年
桜花賞=
レジネッタなど重賞27勝(うちG15勝)を含むJRA通算665勝
提供:デイリースポーツ