“二刀流”という言葉がすっかり一般化している。もちろん、その言葉が示すのはメジャーの大谷翔平選手。大谷以前から当方や立川記者は取材と調教の両方を担当する“両刀”や“二刀流”を名乗っているが、投打ともにハイレベルな結果を残す大谷選手とは比べるまでもあるまい。
記者は別にしてスポーツ界では“二刀流”は注目の的となりやすく、競馬サークルも例外ではない。例えば、芝・ダートの両方でビッグレースを勝った馬=
アグネスデジタル、
クロフネらがその典型だ。今年も
ソダシや
カフェファラオが二刀流GI制覇に挑戦。結果はともに失敗に終わりハードルの高さを感じさせたが、条件を問わずトップ級と互角に張り合う走りは圧倒的な身体能力、強靱なメンタルの証明。他競技の二刀流アスリート同様にスペシャル感が強いものだ。
そんな“二刀流ホース”になる可能性を感じさせるのが
ユニコーンS(19日、東京ダート1600メートル)で初ダートに挑む
インダストリアだ。「二刀流への道が広がればいいですね」と笑うのが
宮田敬介調教師(41)。
NHKマイルCでは2番人気に支持された馬が早々にダートへ挑戦。その経緯を宮田師は次のように説明する。
「
NHKマイルCも具合はすごくよかったし、上手に競馬ができたけど、はじけ切れなかった(5着)。瞬発力で負けてしまった感じだね。レース後のダメージもなく、もう行けそうだったのでここへ。
ラジオNIKKEI賞(福島芝9ハロン)も候補にあったけど、ワンターンの千六(というコース形態)を重視してダートを試してみようかと。それにレーン騎手も連続騎乗できるので」
前走で現状での一線級との切れの差を感じたこと、力をフルに発揮するにはワンターンの千六が最適な舞台であること、名手が続けて騎乗できること。これが
ユニコーンS=ダート参戦の大きな理由だ。
GII
弥生賞を最速上がりで5着するなど、非凡な脚力は確かだけにあとはダート適性だけ。「ダートの強い馬が揃って決して甘くはない」と宮田師は前置きしつつも「パワフルな馬体をしているし、
リオンディーズ産駒はダートで走っている馬も多い。こなせる余地はあるのでは」と前向きな見通しを語った。
もちろん芝レースへの出走を見限ったわけではない。芝でも
トップレベルであるのは明らかで、ダートで結果を出せれば選択肢は無限大に広がるということ。より高いレベルでの“二刀流”へ。
インダストリアの
ユニコーンSの走りに注目だ。
(美浦の元祖二刀流野郎・山口心平)
東京スポーツ