例年以上にバラエティーに富んだメンバーが集結した
宝塚記念(26日=阪神芝内2200メートル)において、特に異彩を放つのが今や“世界の”と枕ことばをつけたくなる矢作厩舎勢である。
ステイフーリッシュ、
パンサラッサともに海外重賞制覇からの凱旋帰国初戦。まさにチェックを欠かせないキー厩舎への取材を入念に重ねた結果、実に大胆な結論に至った――。
実は昨年11月の
福島記念で「2頭出し」はすでに実現している。結果は
パンサラッサ1着に対して、
ステイフーリッシュは惜しくも4着。その中身はというと、前半3ハロン33秒6-5ハロン57秒3という超
ハイラップを刻んだ
パンサラッサが、そのまま逃げ切る驚愕のレースだった。
ステイフーリッシュを担当する藤田助手はその
福島記念を「鞍上(坂井)も当然、勝つ気ではいたんだけど、
パンサラッサがあまりに速過ぎて…。オーバーペースで追いかけたら、さすがに最後はバテていたね」と振り返る。
3000メートルのサウジ・レッド
シーターフH、3200メートルのドバイゴールドC連勝が物語るように、
ステイフーリッシュは本来、マイペースで運べる長距離でこそ、より持ち味が生きる馬。ならば2200メートルの今回も距離不足? 答えはノー。強力な先行勢が多数参戦するからこそ、中距離でもチャンスあり――が藤田助手の見立てだ。
「今回はテンに速い、行きたがる馬がたくさんいるから厳しい流れになる。実際の距離以上にスタミナが求められるレースになれば、可能性は出てくるよね。前半いかにマイペースで運べるかがカギになるかな」
一方、
パンサラッサを手がける池田厩務員は、最大のラ
イバルとなる
タイトルホルダーを向こうに回しても「本気で行かせればパンサのほうが速いよ」と小気味いいまでの徹底抗戦を宣言した。
「ゲートの出は抜群だしダッシュ力もあるから3~4完歩で前に出られるはず。そこでも(
タイトルホルダーが)引かなければハイペースになるけど、それも望むところ。いかに気分良く行かせるか、いかにセーフティーリードを保ったまま直線に向かせるか、というタイプの馬だからね」
実際、
パンサラッサの「進化の始まり」は昨年10月の
オクトーバーSでの大逃げからだった。そこから5戦4勝と確変モードに突入。唯一、土がついた
有馬記念(13着)の敗因が距離の壁なのは明白だけに、今回は2200メートルへの対応が最大の課題となるが、池田厩務員は「内回りでコーナー4つ。コーナリングは抜群にうまい馬だから、ハナを切って内ラチ沿いを運べば、距離はこなせるはず」と手応え十分。むしろこの距離を全開で逃げることで「いかに後ろの馬に脚を使わせるか、消耗戦に持ち込めるか。それこそが勝利への最短距離」という見立てだ。
もう、お気付きだろうか。「スタミナ勝負」「消耗戦」というほぼ同義語を2頭の関係者がキーワードとして発していることに。つまり2000メートルの
福島記念では、
ステイフーリッシュのスピードがやや足りず、同時馬券圏内とはいかなかったが、スタミナが問われる一戦なら「両立」が十分に可能なのだ。それこそ今年の
宝塚記念の“最適解”は、矢作勢のワンツーフィニッシュなんてことも…。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ