ベースはあくまで栗東トレセンにて調教チェック。小倉競馬が2週間開催されなくても、仕事に大きな変わりはない。だが、この
インターバル期間があるおかげで、今年も間隙を突いて短い北海道遠征を敢行することができた。ありがとうございます。感謝しきりです。多くの小倉競馬ファンには申し訳ないが、来年以降もこの空白期間がある日程が続くことを願うばかりである。
一部では「バカンス」などとやゆされた今回の札幌弾丸出張だが、行ったからには業務もしっかりとこなしております。その
ターゲットをGIII
エルムS(7日=札幌ダート1700メートル)に設定すれば、取材対象から外せないのが
ブラッティーキッド。中央11戦未勝利→
地方競馬(2着後に)5連勝→再転入後の北海道シリーズで3連勝という、全国規模でナンバーワンの上がり馬だ。
驚くほどの手応えで上がってくるわけでもなく、勝負どころでズブい面や内にモタれるような面を見せたりもするのだが、そんな状況でも最後はきっちりと差し切ってしまう。しかも、その走破時計も意外と速い。このあたりが妙な奥深さを感じさせる。これはかなりの大物なのかも…。
というわけで短い札幌出張期間中に「チロリン」と呼ばれる西厩舎地区までテクテクと歩き、作業を終えようとしていた本多助手に急接近。
ブラッティーキッドの目下の充実ぶりを存分に語ってもらおうと思ったのだが…。返ってきたのは意気込む記者が拍子抜けするような話の連続だった。
「成長のスピードが他の馬よりもゆっくりなんでしょうね。腰がしっかりしてこないし、トモのほうもまだフラフラです。馬体に幅が出てくるのもこれからなんでしょう。戻ってきてからの結果がいいので(主戦の)水口も“めちゃくちゃ良くなってるの?”と周りによく聞かれるらしいんですけど、“実はそこまで変わってない”と言ってましたね。自分もそう思います。本当に良くなるのはこれから。正直、オープンまで上がってくるのが早過ぎたのかもしれません(苦笑)」
えっ、そんな感じなんですか?いやいや、「滞在効果」があっての連勝ということならやはり今回も脅威。で、そのあたりも突っ込んでみたのだが、「いや、滞在も特に向いているとは思っていないんですよ。さっきも言ったように腰がしっかりしていないので、それなりに乗り込まないと動けないし、逆にやり過ぎるとガタッときてしまう。調整のしやすさでいえば、栗東のほうがやりやすいですからね」。
う~ん、想像していた以上に完成途上で、実に判断が難しい?いや、シンプルに考えれば、一つだけ間違いなく分かったことがある。再転入後の3連勝はポテンシャルの高さだけでやってのけたもの。つまり、
ブラッティーキッドの能力は高い評判に見合ったものであり、考えていたよりもはるかに奥深い馬だったということだ。
「オープンに来るのが早過ぎたと言いましたが、こちらに来る前、調教師には“いずれはオープンに行く馬かもしれません”とは言っていたんです。今の段階で重賞メンバーを相手にどこまでやれるのか。そういう楽しみはあると思っています」
その雄姿を札幌の地で見届けることができないのは残念至極。灼熱の関西から気温に負けない熱視線をモニター越しに送りたいと思っている。
(栗東→札幌→栗東と小刻みに移動野郎・松浪大樹)
東京スポーツ