馬の距離適性は、一体どうしたら分かるのでしょう。血統? 体つき? 走り方? いえ、きっとおそらくそのすべての総合。普段から密に携わる中で、馬が見せるいろいろな一面から、厩舎の方々が時に頭を悩ませながらも「今、一番力を出せる距離」を導き出しているように感じます。馬の成長によって適距離が変わってくる場合も多々あるので、トレセンの方々は私たちが思っている以上の柔軟な考えを持っているとも。
2000メートルの
ローズS(18日、中京芝2000メートル=3着まで
秋華賞優先出走権)で初重賞のタイトルを狙う
メモリーレゾンは1200メートルでデビューし、未勝利を勝ち上がったのも1200メートル。でも、陣営は最初から「短距離の馬」だと決めつけていたわけではありません。実はマイルでデビューさせようとしたところを除外になり、予定が延びた結果でもありました。
「もともと気のいい馬でしたし、持っているモノから1200メートルでも勝てる自信はありました。新馬戦は2着だったけど、2戦目でしっかり勝ち上がってくれましたしね。ただ、勝ったときのレースぶりから距離を延ばしていって良さそうだと感じることもできました」と当時を振り返るのは長谷川調教師。
小倉1200メートルを後方から差し切ったときの脚を見れば、同じように感じたファンの方も多いのではないでしょうか。
そこから1600メートル、1800メートルと距離を延ばして勝ち上がってきた
メモリーレゾン。目指すレースがあっても、常に“馬本位”の調整を行っている長谷川厩舎では、前走後まず“体を戻すこと”を主軸に置いてここまでの調整を行ってこられました。そのかいもあってか、春先こそまだ体つきに幼さを残していた彼女はここにきて
シルエットが変わってきたといいます。
「体つきだけでなく、乗っていても芯が入った感じがします」と普段から追い切りにまたがっている長谷川調教師が言うのですから、彼女が成長期を迎えていることは確か。その上で、さらなる距離延長にどのような手応えを感じているのでしょうか?
「走り方的には2000メートルがギリギリかなと思っているけど、前走(北海H1着)のレースぶりからいろいろな可能性を感じましたから。小回りにも対応できるとはいえ、エンジンがかかってからいい脚を使うので、広いコースの方がこの子の持ち味が最大限に生かせるのではないかと思います」
それに、と長谷川調教師は続けます。「折り合い面に関して全く心配がないので」
体重も安定し、若馬から大人の競走馬へと成長してきた
メモリーレゾン。彼女の能力を信じ、常に寄り添って成長を見守ってきた陣営が「力を出せる条件」だと確信するのが今回の中京2000メートルです。それを適性…とひと言で表すと少し意味が違ってきてしまうかもしれないけれど、秋にGIを目指す上で、「
メモリーレゾンの守備範囲」の距離であると言えるようなレースをしてくれる…。今までのレースぶりからも、長谷川厩舎の調整過程からも、期待しか湧いてこないのです。
(栗東のインドア女子・赤城真理子)
東京スポーツ