ある厩舎で活躍馬が1頭出ると、それにつられて他の馬も走ってくる――。この手の現象は過去に多く目撃した。勝負事の世界はやはり流れが大切なのだ。
今夏の
札幌2歳Sを
ドゥーラで制覇。開業9年目にして初の重賞勝ちを飾った高橋康厩舎は今、最も勢いのある厩舎と言っていいのではないか。となれば今度は
スプリンターズS(10月2日=中山芝外1200メートル)に臨む
トゥラヴェスーラで初のGIタイトルまでも手にする? 高橋康調教師に入念な取材を行う必要がありそうだ。何せ春のス
プリント王決定戦では0秒1差4着。しかもアク
シデントがありながら、この小差だったのだから…。
その
高松宮記念を改めて振り返ると、13番枠スタートの中団後ろから、うまく内に入って距離ロスのないラチ沿いを追走。直線ではうまくさばいて抜けてきそうな脚色だったにもかかわらず、ラスト50メートルあたりで逆に失速気味になっていたことにお気付きだろうか?
「抜けてきそうな感じだったんだけど、あそこ(ラスト50メートルあたり)で鼻出血を発症した分、伸び切れなかった。ギリギリのところまで頑張っていたから、最後の最後に鼻血が出たんだと思う。当時は(前哨戦の)
阪急杯(2着)を使っての競馬。鼻出血を発症したのはそのあたりの影響もあった可能性があるからね。今回はぶっつけでいこうと決め、早めに入厩して、ここを目標に順調に乗り込んできました」
これだけで高橋康調教師のこの一戦に懸ける思いが伝わってくる。もちろん、肝心の仕上がりは「先々週、先週と2週続けてジョッキーに乗ってもらってだんだんと気が入ってきた。輸送で多少体は減るかもしれないけど、いい体つきで出せると思うよ」と万全なのは言うまでもあるまい。
「脚にボルトが入っている馬なんだ。以前、痛い思いをしたことがトラウマになっていたのか、手前を替えるのを嫌がるところがあったんだけど“(手前を)替えても大丈夫なんだよ”と調教でスタッフが教え続けてくれた。馬混みについても同様。“ピタッと馬の後ろにつけても安心だよ”と調教で丹念にわからせてきたことで狭いところでもヒルまなくなった。荒れた馬場になっても苦にしないしね。そのあたりすべてが今の充実ぶりにつながっていると思う」
いよいよ本格化を告げる
トゥラヴェスーラ。高橋康厩舎の、さらには先週の
神戸新聞杯を
ジャスティンパレスで制した鞍上・鮫島駿の勢いも加わることで、この
スプリンターズSでは
高松宮記念を上回る走りを見せてくれるのは間違いないのではないか。
(栗東の永遠の腕白小僧・芝井淳司)
東京スポーツ