◆第56回
スプリンターズS・G1(10月2日、中山・芝1200メートル、良)
秋のG1開幕戦、第56回
スプリンターズSは2日、中山競馬場の芝1200メートルを舞台に、16頭が出走して行われ、8番人気の
ジャンダルム(牡7歳、栗東・池江厩舎)がG1初制覇を飾った。鞍上の
荻野極騎手(25)=栗東・フリー=もうれしいG1初タイトルとなった。
控えめな
ガッツポーズ。
荻野極は
ジャンダルムの背中の上で、静かに喜びをかみしめた。人馬ともに初のG1の勲章は、新潟開催だった2002年を制した
母ビリーヴとの、同レース史上初の母子制覇の大偉業ともなった。検量室でようやく笑みがこぼれたヒーローは「すごくうれしい。感謝の気持ちでいっぱいです」と周囲への思いを口にした。
イメージ通りだった。課題のスタートを決め、好位の3番手につけた。直線は中山の急坂を早め先頭で駆け上がる。
ウインマーベルが追ってきたが、首差抑え込んでゴールに飛び込んだ。「道中、直線ともにスムーズに運べた。手応え通り、しっかり伸びてくれた」と会心の騎乗だった。
池江厩舎との出会いが今回の大舞台へと誘った。池江厩舎に所属する騎手の水口が、20年夏に北海道シリーズに拠点を置いたことで、その“代役”として同厩舎の栗東での調教を本格的に手伝うようになった。仕事を着実にこなしていくうちに、厩舎スタッフも信頼を寄せてくれるようになった。かつて3冠馬
オルフェーヴルも管理した池江調教師が「極、極」と気軽に話しかけるほど、今では親密な間柄だ。
ジャンダルムとも濃厚な時間を過ごした。出遅れ癖が課題だった愛馬との付きっ切りの練習の中で「レースと、普段のギャップを感じられた」と癖を把握。出遅れない手法を自分なりに得て、3月の
オーシャンSを勝った。これが自身の重賞初制覇だった鞍上は、そのわずか半年後にG1タイトルも手にした。
トレーナーも「極が乗るとゲートでもじっとしている」と、信頼を勝ち得ての勝利。7歳馬の短距離王の次走は決まっていないが、母から受け継いだスピードが本領を発揮するのはこれからだ。「より気を引き締めて技術に磨きをかけたい」と
荻野極。“2人”の道には、まだまだ続きがある。(松末 守司)
◆荻野 極(おぎの・きわむ)1997年9月23日、東京都生まれ。25歳。2016年3月に阪神でデビュー。同4月に阪神で初勝利を挙げると、2年目の17年に47勝をマークした。その後、勝ち星を減らし、昨年は16勝だったが、今年はすでに20勝(2日現在)と復調ムード。身長161センチ、体重50キロ。
◆
ジャンダルム 父キトゥンズジョイ、
母ビリーヴ(
父サンデーサイレンス)。栗東・
池江泰寿厩舎所属の牡7歳。米国・ノースヒルズの生産。通算29戦7勝。総獲得賞金は4億1551万2000円。主な勝ち鞍は17年
デイリー杯2歳S・G2、22年
オーシャンS・G3。馬主は前田幸治氏。
スポーツ報知