今シーズンの門別開催も、終幕まであとひと月を切った。朝晩は気温ひと桁の冷え込みが続くようになり、人知れず空は高く、人の影はひと回り大きくなった。運動を終えて体からもうもうと湯気を立ち上らせている馬の首に抱きついて、暖を取りたくなる気持ちを抑えながら、ひとしきり厩舎を回ったあとに飲む缶コーヒーのおいしさを、ひとり噛みしめる日々である。
さて、昨年の
道営記念以降、長く隊列を離れていた道営チャンピオン・
クインズサターンが復帰したことにより、混沌とした古馬中距離路線に、ようやく向心力がはたらき始めた。
道営記念連覇という実績は抜きん出ており、やはり主役はこの馬だろう。長欠明けを物ともせず勝利した復帰戦から、能力的な衰えは感じられない。昨年のこのレースは先行勢を捉えられず4着に敗れたが、今年の顔ぶれを見る限り、今年の方が流れは向きそうだ。自身の位置取りと仕掛けどころさえ間違わなければ、同じ轍は踏まないはずである。
覇権奪取に燃える馬たちの中では、
田中淳司厩舎の2頭、いずれも休み明け2戦目となる
フローリンと
テーオーフォースが有力だ。今年のこの路線で前者は
赤レンガ記念を、後者は
コスモバルク記念を勝利しており、王者不在の間、着実に実績を積んできた。折り合いの難しさが課題だが、能力は重賞級の
チャイヤプーン、復活の兆しを示している
ハセノパイロなども上位圏内である。
ただ、あくまでここは前哨戦。上記の馬たちはほとんど、次の本番を見据えたレースという位置づけである。そのようなメンバーの中で、距離適性やローテーションなどを鑑み、むしろここに全力投球と思えるのが
グリントビートだ。ここ2戦は勝ち切れていないが、他馬より重い59kgを背負っていたのだから、僅差の頑張りを評価すべきだろう。マイル戦の星雲賞で初重賞Vを飾ったように、2000mの
道営記念は少し長い印象を受ける。狙うなら、1800mの今回ではなかろうか。
(文:競馬ブック・板垣祐介)
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