◆第27回
秋華賞・G1(10月16日、阪神競馬場・芝2000メートル=良)
牝馬3冠最終戦、第27回
秋華賞・G1は16日、阪神競馬場で行われ、3番人気の
スタニングローズが、同じ高野厩舎の
ナミュールを半馬身差で退け、戴冠(たいかん)。
坂井瑠星騎手(25)=栗東・矢作厩舎=とともに
JRA・G1初制覇を飾った。史上7頭目の牝馬3冠を狙った1番人気の
スターズオンアースは出遅れが響き、追い上げ及ばず3着に敗れた。
確かな自信が全身を突き動かしていた。4コーナー手前。坂井が好位を追走していた
スタニングローズの手綱をぐっと押した。「これで負けたら仕方ないかなという反応でした」。馬場の真ん中に持ち出された直線では祈りを込めるように左ステッキを大きく振り下ろした。
ラスト100メートルで先頭に立つと、今度は外から僚馬の
ナミュール、内から牝馬3冠を狙う
スターズオンアースの強襲。しかし、右、左と何度もステッキを持ち変え、加速を促すと、力強いフットワークで応えてくれた。半馬身差をつけて駆け抜けた歓喜のゴール板。「最高でした」。レース直後の馬上で左手の人指し指に軽くキス。喜びを表現した。
異国での経験が25歳の若者を大きくした。師匠の矢作調教師から何度も言われたのは「世界で通用するジョッキーになりなさい」。デビュー2年目の17年冬から豪州を中心に1年間の武者修行。その後も厩舎の海外遠征に帯同し、レース騎乗だけでなく、現地に1か月ほど滞在したこともある。
今年も中東、欧州に何度も遠征し、3月にドバイのゴドルフィンマイル(
バスラットレオン)で海外重賞初制覇。一方、国内ではキャリアハイの72勝をマークする。「緊張をあまりしなくなりましたね。今日は特に3回目のコンビなので何の不安もなく、レースに臨めたのがよかったです」。検量室前では笑顔の矢作師に「Well done(よくやった)」と声をかけられ、師匠の大きな手を力強く握った。
今秋は同期の
荻野極が
スプリンターズSでG1初制覇。「刺激になりました。今日は勝つしかないと思っていました」。大一番でも揺らがなかった強い気持ちは最高のエスコートという形で体現された。「一戦一戦、力をつけ、2冠馬を倒してくれた。まだまだ、これから楽しみな馬です」。デビュー7年目でつかんだ大きな勝利もまだ序章。世界を目指す歩みはこれからも続いていく。(山本 武志)
◆坂井 瑠星(さかい・りゅうせい)1997年5月31日、東京都生まれ。25歳。16年3月に栗東・矢作厩舎所属でデビュー。
JRA通算268勝。重賞は19年報知杯
フィリーズレビュー(
ノーワン)の初制覇を含め10勝。20年に大井での交流G1・
ジャパンダートダービー(
ダノンファラオ)を勝っている。170センチ、48キロ。同期は栗東の
荻野極、森裕太朗、美浦の
菊沢一樹、
木幡巧也、藤田菜七子。
スポーツ報知