今村聖奈が小倉巧者
カデナに騎乗することで話題を集めた今夏の
小倉記念で強い輝きを放ったのは、こちらも“気鋭の女戦士”
マリアエレーナだった。
4角で先頭に並びかけに行くと、そのまま後続を5馬身以上ぶっちぎる圧巻走。鞍上の松山が「暑さが吹き飛ぶ強さ」とレース後に語った通り、胸のすくような豪快かつ爽快なシーンだった。
「1コーナーの入りで大丈夫だと思ったね。競馬が上手な馬だからスタートさえ決まれば出たなりにポジションを取れる。それにしても4コーナーの手応えが他馬とは段違いだった。自分から動いて直線の短い小倉であれだけの差をつけるのだから大したものだよ」
高島助手がそう振り返った
マリアエレーナの“覚醒”。そのきっかけとは何だったのか?
デビュー当初の
マリアエレーナといえば、折り合いが最大の課題となっていたため、後方待機策から直線にかける競馬を繰り返していた。末脚は確実に使うが、なかなか勝ち切れないのが正直な印象。そんな中でも約1年間、ほぼ月イチペースでレースを使われ続けてきた。
「デビュー後しばらくは速い上がりが求められる競馬を繰り返してきた。レース後は相当なダメージが残っていたと思うし、それもコンスタントに使っていたんだから、本当にしんどかったと思う。そのしんどい時期を乗り越えて、体質が強化されたんだろうね。ある時期からレース後の疲労が目に見えて減ってきたんだ。そのあたりから相手関係が厳しくなっても、頑張れるようになった」(高島助手)
若い時期に陣営が施したハードな“実戦トレーニング”が体質強化につながり、さらには中距離路線にシフトしたことで秘めた素質が徐々に開花してきたのだろう。
「体質強化により芯が入ったことで疲労からの回復が早くなったうえに、オープン入りすれば適度な間隔を取ったローテーションでレースにいける。能力を存分に発揮できるようになったのは、それも大きいと思うんだ」
つまり体質強化でオープン入り→無理のないローテ→さらに力を発揮する「好循環」が生み出したのが、あの
小倉記念の大激走というわけだ。
「今度は力勝負の東京に替わるけど、
小倉記念であれだけ強い競馬ができたんだから楽しみはあると思っている。実は松山騎手で2000メートルに臨んだ時は3戦3勝。
デアリングタクトで牝馬3冠を取ったように牝馬の扱いが巧みだし、本当に心強いパートナーです」
そう、
マリアエレーナの“覚醒物語”は現在進行形。この
天皇賞・秋(30日=東京芝2000メートル)で
クライマックスを迎えるのかもしれない。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ