「夏の上がり馬」がいるなら、「秋の上がり馬」がいてもいい。前走の
京成杯オータムHを制した
ファルコニアは、マイル
チャンピオンシップ(20日=阪神芝外1600メートル)での大仕事を予感させる一頭だ。
「最高の結果でした。
ファルコニアにとって待望の重賞タイトルを取ることができましたし、馬の成長が見られた一戦でもありましたから」
高野調教師が挙げた成長。そのひとつが「折り合い」だ。
「以前は勝負という意味では、もうちょっと収めたいという状況が続いていました。ちょっとだけジョッキーの“手の外”に行ってしまうというか、完全に手の内に入ったまま序盤を過ごせていませんでしたから」
その課題の克服へ向け、今年2月の
洛陽Sからマイル路線へ。しかし、競馬ぶりは良くなったものの、あと一歩、勝ち切れない。これが今夏までの
ファルコニアだった。ところが…。前走は流れはスロー、そして前に壁がない状況でもピタリと折り合ってみせたのだ。
「もともと1600メートルは走りやすい状況。そんな中で道中、無駄な力を使わず走れたことで、重賞を勝ち切るくらいのエネルギーを直線で残すことができました」
トレーナーも大満足の走りで、良血
ディープインパクト産駒がついに重賞の壁を突破した。そして中間、英気を養ったことで、いい流れはさらに加速している。
「まず馬がフレッシュだということですね。肩回りやお尻の筋肉にすごく張りが出ました。前走の直前、随分良くなったなという感触はあったんですが、前走後またさらに良くなった。ひと息入れたのが本当にいい効果を生んでいると思います」
中間の放牧が吉、いや大吉と出た
ファルコニアだが、実はここへの臨戦過程には「プランB」もあったという。
「
マイルCSの前に富士Sを使うプランもあったんです。でも、GIに出られそうという話を聞いてからはパスして、“よりフレッシュ感を持っていきましょう”と。それも含めてすべては
京成杯を勝ったおかげ。もし2着とか、3着だったら、とてもじゃないけど、その決断はできなかった」
現代競馬はいかに「活力」を持ってレースに臨めるかが重要。それを可能にした前走の勝利は、冒頭のトレーナーの言葉通り“最高の結果”だったというわけだ。
「全身をものすごく大きく使っています。今までも大きくは使っていたんだけど、そこにフレッシュ感と
パワーもついてきた。状態が本当にいいので、すごく楽しみ。参加するだけじゃなく、“やってくれそうだな”という状態と雰囲気で臨めると思っていますよ」
この秋、ひと皮むけた
ファルコニアからはまさに激走ムードが漂いまくっている。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ