現3歳世代のクラシック戦線をリードした厩舎といえば、関東では
木村哲也厩舎の名前が真っ先に挙がるだろう。牡馬路線では
皐月賞で
ジオグリフ&
イクイノックスがワンツーフィニッシュ。ダービーでは
イクイノックスが2着に入った。一方、牝馬路線でも
プレサージュリフトが牝馬3冠で皆勤を果たしている。関東リーディングでも上位につけており、まさに名実ともに美浦のトップステーブルと言っていい。
そんな木村厩舎が来年の牝馬クラシックを見据えて
阪神ジュベナイルフィリーズ(11日=阪神芝外1600メートル)に送り出すのが
ウンブライルだ。2018年の
マイルCSを制した
ステルヴィオの全妹にあたる、生まれもっての才女は目下デビュー2連勝中。とりわけ前走のオープン・もみじSは阪神まで遠征して、しかも牡馬相手に挙げた勝利なのだから、その価値は高い。まさにスキのないエリート候補生に見えるが…。そのレース内容に目を向けると、必ずしも盤石とは言い難い面も。
スタートで後手に回りながら、前進気勢あふれる走りで一気にポジションを上げて押し切ったデビュー戦とは対照的に、前走のもみじSは道中の行きっぷりが悪く中団で促されつつの追走。直線を向くとようやくエンジンがかかり、結果的には余裕をもっての差し切りとなったものの、初戦と比べるとやや不安定なレースぶりに映った。
そんな疑問をぶつけると「まだ走りがアン
バランスで、左手前に比べると右手前の走りが良くないんですよね。ですから右回りのコースだとコーナリングの質が…。実際、前走の1週前追い切りもあまり良くなかったんです」と冷静に課題を挙げるトレーナー。一方で「とはいえ、そういう状況下でも勝つことができたのは収穫でしたし、ご覧の通り、まだ伸びシロを感じさせる内容だったと思います」と前向きに評価している。
そんな前走を受けての中間の調整は「課題を修正しながら」。それでも先月30日の1週前追い切りでは、同厩の古馬3勝クラス・
セントオブゴールドを相手に、優勢な手応えで余裕をもって併入に持ち込む圧巻の動きを見せた(南ウッド7ハロン99.3-11.8秒)。
「やりたいことができました。2頭併せの形でも意識的に前方に単走の馬を置いたことで、右回りでも質の高い動きに導くことができたと思います。まだハミの取り方がキツかったりと課題はありますけど、レースまで時間があるので、さらにレベルを上げていければ」
無傷の連勝という結果におごることなく、課題を見つけて修正しながらさらなる高みを目指していく――。近年の木村厩舎の快進撃を支えているのは、謙虚かつ貪欲なこの姿勢にある。最終追い切り後にトレーナーの口から「まだ…」とのエクスキューズが取れるようなら…。2歳女王への道がハッキリと見えてくる。
(美浦のつぶやき野郎・藤井真俊)
東京スポーツ