◆第145回
中山大障害・JG1(12月24日、中山競馬場・障直芝4100メートル)
刻一刻と近づく
オジュウチョウサンのラストランを前にして、長らく主戦ジョッキーを務めてきた
石神深一は驚くほど強気だ。「全然やれる手応えはある。前走(
東京ハイジャンプ9着)はあんな形になったが、今回は得意の舞台。休み明けを1回叩いたし、好条件がそろっている。そういう意味では期待している」と言い切る。
人馬一体で繰り広げた数々の名勝負のうち、石神がベストレースに挙げるのは17年の
中山大障害だ。好敵手の
アップトゥデイトが大逃げを打ち、万事休すと思われたリードを最後は半馬身差で逆転してみせた。「アップと林(満明元騎手)さんにやられたと思ったのに、絶対に届かないところから差し切れたのは、オジュウにしかできない」。優れたスタミナ、それ以上に最後まで諦めない闘志に鞍上が逆に奮い立たされたほどだったという。
調教師の
和田正一郎も「一番衝撃を受けました。勝つには勝ったが、毎回こんな厳しい競馬をしなければならないなんて…」と、あんなに鳥肌が立ったのは一度だけだという。オーナーの長山尚義も「あの大逃げを差したのは感動したよ」と、強烈な印象が残っている。持久力と勝負根性が求められる過酷な舞台だからこそ輝き、今回も勝算をはじけるわけだ。
相棒との別れについて石神の胸には相反する思いが去来する。「無事に引退して平穏無事な余生を過ごしてほしい」という愛情と、「負ける姿は見たくない」という闘魂。熱い血がたぎる人馬が、伝説のフィナーレを飾る。=敬称略=(坂本 達洋)
スポーツ報知