2月1日(水)に
川崎競馬場で行われる
川崎記念(4歳上・JpnI・ダ2100m)。中央、地方を通じて今年最初に行われるGI級競走で、フェブラリーSや
ドバイWCへの前哨戦としても注目したいレースだ。
本稿の主役は
ロジータ。
地方競馬に馴染みの薄い競馬ファンであっても一度は耳にしたことがある馬名ではないだろうか。僅か1年半という短い現役生活の中で、南関東三冠や
東京大賞典など重賞8勝。引退から30年以上が経った今でもファンや関係者の中で語り草となっている地方屈指の名牝だ。
川崎記念の開催を前に、彼女の活躍と引退レースを振り返ってみたい。
ロジータは
父ミルジョージ、
母メロウマダング、母の
父マダングという血統の牝馬で、現役時代は川崎の福島幸三郎厩舎に所属した。父は1980年代から90年代にかけて活躍馬を多数送り出した名種牡馬で、母は2度のレコード勝ちを飾った快速馬。2頭の間に生を受けた
ロジータは、父譲りの
パワー、母から受け継いだスピードを武器にタイトルを積み重ねていく。
3歳時は4戦2勝と決して目立たぬ存在だったが、4歳を迎えると本格化。
ニューイヤーCでの重賞初制覇を皮切りに
京浜盃、
桜花賞と連勝する。既に牝馬三冠路線は成立していたが、勝ちっぷりを見た陣営は牡馬への挑戦を決断。
ロジータも期待に応え
羽田盃、
東京ダービーを制して2冠を達成し、同世代で敵無しの強さを発揮した。特に
東京ダービーでは外枠が圧倒的不利といわれる大井2400mを8枠から完勝。4コーナーから大外ひと捲りの豪快な競馬で、牡馬相手に3馬身という決定的な着差を付けている。
その後、古馬と初対決になった報知
オールスターCで連勝はストップするが、秋には更に進化を遂げた。手始めに
東京王冠賞を制して三冠を達成。暮れの
東京大賞典ではデビューから17戦連続で連対中だった
スイフトセイダイを退け、「公営最強牝馬」と言わしめるようになった。
ロジータが
ジャパンCでシンガリ負けを喫した直後とはいえ“2番人気”が不思議な位の圧勝。怪物
スイフトセイダイを馬なりで4馬身突き放す姿にはファンや関係者のみならず、鞍上の野崎武司騎手でさえも強さに驚いたという。
東京大賞典の勝利で人気、実力ともに絶頂期を迎えたが、繁殖入りを見据えて早くも引退が決定。ラストランが地元凱旋に決まると、1990年の
川崎記念は
ロジータ一色に染まる。彼女をひと目見ようと4万人を超える観衆が競馬場に詰めかけ、レース発走間際まで馬券購入窓口にファンが殺到。
ロジータの単勝オッズは1.0倍の元返しとなり、他馬は全て単勝万馬券という「石に花咲く」状態となった。ファンが願うのは彼女の勝利、ただ一つ。熱気に満ちた異様な雰囲気の中、最後のゲートが開く。
スタートすると外から
ダービーラウンドが飛び出し、
ロジータは好スタートから控えて内4番手を淡々と追走。少頭数のゆったりとしたペースの中で、レースが動いたのは向正面だった。鞍上の合図に応えて早くも2番手に上がると、馬なりのまま最終コーナーを通過。
ロジータは拍手と大歓声に迎えられ直線に入った。圧巻、驚愕、衝撃――。直線の走りは言葉では表せない美しさと凄みがあった。着差は8馬身。しかし、それ以上に長く、遠く感じた。
引退年には早くも重賞
ロジータ記念が創設。2010年からスタートした牝馬重賞シリーズ『GRANDAME-JAPAN』のキャッチコピーにも彼女の名が採用された。「
ロジータ、ふたたび。」。川崎の地で花開いた名牝は、いつまでもファンの中で咲き続けている。