過去には“王道路線”と言われていた弥生賞。2歳の年末時点で世代最強と目される馬はこのレースから始動し、
皐月賞を経てダービーに向かうべきだと、競馬ファンはもちろん、多くの競馬関係者もそう考えていたはずです。弥生賞の1番人気馬から、クラシック戦線の中心を担う王者としての
プライドが垣間見えていた時代の話です。
しかしながら調教技術の進歩により“レースを使いながらの調整”、“本番前のひと叩き”といった概念が薄れてきた近年、
トライアルを使わずに
皐月賞やダービーに直行するトップホースが増えてきたことは覆い隠せぬ事実でしょう。“弥生賞勝ち馬”の
皐月賞制覇や“弥生賞1番人気馬”の
皐月賞制覇はもちろん、“弥生賞に出走した馬”の
皐月賞制覇でさえも、2010年の
ヴィクトワールピサ以来12年間途絶えている状態です。
ただ、そういった出走馬レベルの低下が懸念されたのも束の間、ここ2年は
タイトルホルダー、
シュネルマイスター、
アスクビクターモアに
ドウデュースといった“のちのGI馬”を輩出。“土曜2重賞”に対しての“日曜1重賞”はGIにも匹敵する取り扱いであり、そんなGIIはほかにひとつたりとも存在しません。弥生賞の格式はいまだ健在なのです。
そういった格調の高さからハイレベルなレースだと思われていた弥生賞なのですが、実は20年以上前の昔から、レース自体のレベルはそんなに高いものではありませんでした。同コース重賞、(GIになる以前の)
ホープフルSや
京成杯と同等、もしくは若干劣ると言ってしまっても良いかもしれません。
少頭数の
トライアル、本番に向けて疲労を残したくないという心理も働くためでしょう。非常にユッタリとしたペースから、上がりも大して速くはない、直線でもギリギリのシビアな仕掛けは控えるようなレースが多く見られていました。つまり弥生賞は伝統的に先行馬有利の傾向、いやそれよりも差し馬不利の傾向と言うべきでしょうか。
■弥生賞出走馬の前走位置取り別成績
前走4角4番手以内 115戦【12-11- 9-83】勝率10% 単回収97% 複回収87%
前走4角5番手以下 133戦【10-11-13-99】勝率 8% 単回収42% 複回収62%
※
JRAのみ。2001年~2022年
元来、弥生賞はGI級であってほしいという期待から“末脚で勝負する馬”に人気が集まる傾向にあり、それがゆえに期待値的には明白な差が出ています。前走4角5番手以下のグループは、2013年に単勝19.8倍で勝利した
カミノタサハラ(前走4角7番手)を擁しても、それでもトータルで41%の低回収率なのです。
今年の弥生賞登録馬で“前走の4角位置”が5番手以下だったのは
アームブランシュ、
グランヴィノスと
タスティエーラの3頭だけなのですが、3頭のうち2頭がかなりの人気を集めそうな馬である辺り(※
グランヴィノスは出走予定を回避しました。)、これは今年も意識しておくべきデータでしょう。
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立て、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。
ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで弥生賞を解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
(文・岡村信将)