00年
高松宮記念。前年の
スプリンターズSで1、2着だった
ブラックホークと
アグネスワールドが2強。それぞれ単勝2・2倍と2・7倍。
ブラックホークは前哨戦の
阪急杯を完勝。
アグネスワールドは休み明けだったが、
スプリンターズSの2走前にはフランスでG1アベイドロンシャン賞を制覇。国内G1初勝利は譲れないところだった。続いて5・4倍
マイネルラヴと外国産馬が上位人気を独占。離れた4番人気(12・7倍)が
キングヘイロー。
最内枠の
メジロダーリングが先頭へ。
アグネスワールドが2番手で、前半3Fは33秒1。同日8Rの500万・
小牧特別が同33秒2。500万級としてはかなりのハイペースだが、G1なら平均よりやや速いぐらい。ただし
メジロダーリングは息を入れる間もなく、4コーナーから
アグネスワールドが押し上げてくる。当時まだ改修前の中京は小回り。仕掛け遅れてはならぬとばかり、後続も一気に差を詰めて、直線では17頭のメンバーの半分以上に見せ場がある激しい競り合い。その競り合いの外から
ブラックホーク、さらに外、馬場の真ん中外寄りから
キングヘイローが伸びる。
キングヘイローが馬群をまとめてかわし、ゴール前で粘る
ディヴァインライトをかわした。
ゼッケンと鞍を手に、
キングヘイロー鞍上の
柴田善臣が笑顔で引き揚げてくる。感極まる坂口正大調教師はあふれる涙を拭いもせず、がっちりと握手を交わした。
キングヘイローはG1挑戦11度目にしてやっとつかんだ悲願のタイトル。同師は「こんなにうれしいことで涙を流せるんだから、これが男泣きなんですね」と目頭を抑えた。
各馬が早めに仕掛けて、結果的に上がり3F35秒5もかかるタフなレース。先に抜け出した
ディヴァインライトを最後のひと伸びでかわしたのは、まさに良血の
プライドと勝利への執念だった。
98年クラシック戦線では
スペシャルウィーク、
セイウンスカイと共に3強を形成したが、
キングヘイローは無冠。その後もG1で人気は集めるものの勝てなかった。坂口正大師は「とにかくタイトルを獲らせたい、いや勝たせるのが私の使命だ」との決意を胸に中距離からマイル、さらにス
プリント、そしてダートにも出走させた。ローテーションを批判する手紙も厩舎に送られてきた。苦悩の日々を耐え抜き、ついに
キングヘイローが勲章をつかみ取った。
悲願成就をもたらした
柴田善臣は「スタート前からいい感じで燃えていた。気分を損ねないことだけを心がけた」と振り返った。外から外を気分良く追走させ、力を十分に引き出した。
2着
ディヴァインライトの鞍上は、かつて
キングヘイローの主戦を務めた
福永祐一。「やることはやった。馬の力は引き出せたと思う」と騎乗には納得。それでも口をついたのは「一番いてほしくない馬が前にいた」。のちの名手も当時22歳の若手。それまで6度G1に騎乗しながら、自身の手ではかなわなかった
キングヘイローの戴冠。至らなかった自分のふがいなさを思ったのか、表情は複雑だった。
※
キングヘイローG1(00年
高松宮記念まで)
【98年】全て福永騎乗
皐月賞 3番人気2着
ダービー 2番人気14着
菊花賞 3番人気5着
有馬記念 10番人気6着
【99年】安田、宝塚、秋天は柴田善、あと2つは福永
安田記念 2番人気11着
宝塚記念 5番人気8着
天皇賞・秋 9番人気7着
マイルCS 4番人気2着
スプリンターズS4番人気3着
【00年】2戦とも柴田善
フェブラリーS1番人気13着
高松宮記念 4番人気1着
スポニチ