一部のマスコミやファンの間で、
ジャックドールが“令和の
サイレンススズカ”と呼ばれているそう。確かに逃げ馬、栗毛の馬体と共通項は多いようにも思えるが、冷静に分析すれば2頭の逃げ馬としてのキャラクターは異なる。前半3Fを34秒台、5Fを57秒台で飛ばした“天性のスピード馬”
サイレンススズカと比べると、
ジャックドールの逃げは大人しめ。
未勝利から昨夏の
札幌記念まで、
ジャックドールが制した全7戦の前半3Fを見ると、最も速いのが
札幌記念の35秒5。逃げたレースに限れば
金鯱賞の35秒7だから、意外に遅め。一方、前半3Fが34秒台となった昨年の
大阪杯と
天皇賞・秋はそれぞれ5着、4着に敗退。
サイレンススズカのように前半から速いラップを刻みつつ、上がりをまとめられるタイプではない。
その上で本題となる
武豊騎手の手綱さばきに注目。
大阪杯を振り返ってみると、大きく2つの注目ポイントが挙げられる。
1つ目の前半の入り。他の騎手の「
ジャックドールが逃げるに違いない」という先入観も利用したのか、パートナーを急かすことなく、左右の動きを確認しながら、逃げの態勢。前半3Fのラップは、昨年の34秒6(12秒3-10秒3-12秒0)に対し、今年は35秒5(12秒4-10秒9-12秒2)と0秒9も遅かった。
大きかったのは2F目の10秒9。もちろん、昨年の
アフリカンゴールドのような同型馬が不在だったことも大きい。いずれにしても序盤の省エネが、勝利を大きく引き寄せたことは間違いない。
2つ目の注目ポイントは残り6Fからのラップの刻み方。ペースを緩め過ぎると、18年の
スワーヴリチャードのような捲りを決められる危険性も。しかし名手は巧みで、3F目と4F目は12秒台だったが、一転して5F目は11秒4とペースアップ。ここから11秒7、11秒5、11秒4、11秒4と、残り1Fまで11秒台半ばのラップを5連発。この間の5Fは驚異の57秒4だから捲られるはずもない。
体内時計はさすがの一言。3月15日で54歳。肉体的な衰えがないはずはないが、それでも第一線で活躍を続けられる所以だろう。