皐月賞に熱視線が送られる週末なのは承知の上で、記者はあえて強調しておきたい。その牡馬クラシック第1弾の前日に行われるGIIIアーリントンC(15日=阪神芝外1600メートル)も見逃せないレースであることを。
昨年の覇者
ダノンスコーピオンが余勢を駆ってそのまま本番の
NHKマイルCも制し、GIホースの仲間入りを果たしたのは記憶に新しいところだが、改めてアーリントンCの勝ち馬を見直してみると、さまざまな路線で活躍したスターホースたちが居並んでいることに驚かされる。
マイルから中長距離まで幅広いレンジで良績を残した
ジャスタウェイはもちろん、ス
プリントの
高松宮記念を制した
コパノリチャード、逆に長丁場の
天皇賞・春を制した
レインボーラインの名前まで刻まれている。マイル路線というよりは「オール
マイティーに活躍馬を送り出してきたレース」という表現がしっくりくるのだ。そんなアーリントンCで今年、記者が熱いまなざしを注いでいるのが
ティニア。2017年の勝ち馬
ペルシアンナイトを管理した池江厩舎が送り出す素質馬だ。
初戦の舞台は中京芝1400メートル。鞍上の福永は抜群のスタートを切りながら、あえて中団まで下げてしっかりと脚をため、鮮やかに差し切った。レースを見守った池江調教師は「ゲートは練習よりも速かったくらいだけど、行き切ると味がない馬になってしまう。ジョッキーがうまくなだめて控える競馬をしてくれました」と鞍上の好騎乗をたたえている。
フランケル産駒特有の前向きな気性を考慮して、先々に向けて距離の幅を広げられるよう馬を教育する、まさに“
プロフェッサー”福永の真骨頂。今年3月から調教師に転身した名手の深謀遠慮が後々に生きてきたことは、その後の戦績にもよく表れている。
キャリア2戦、1勝馬の立場で挑戦した昨年末のGI
朝日杯FSでは0秒8差8着に敗れたものの、自己条件に戻った前走のフ
ローラルウォーク賞では、好発から楽々とハナを奪うと、そのままマイペースに持ち込んで逃げ切ってみせた。
「(福永)祐一さんとも話し合ったのですが、少しハミをかむところがあるので、日ごろの調教から落ち着かせるようにしています。その成果が出ていますね」と岩崎助手が語るように、福永と厩舎スタッフによる二人三脚の取り組みが実を結んだからこそ、距離1600メートルで2勝目を挙げることができたのだろう。
「まだ成長の余地はあるけどね。背腰の緩さはだいぶ解消されたし、精神面も成長していますよ」と語る池江調教師。厩舎の先輩
ペルシアンナイトは
皐月賞で2着に好走した一方で、
マイルCSで最高峰のタイトルを手にした。果たして
ティニアはどんな成長を遂げるのか、先々が実に興味深いところだ。
(鈴木邦宏)
東京スポーツ