スターズオンアースが現役屈指の牝馬であることに異論の声はほとんどなかろう。GI・2勝の実績だけでなく、過去9戦<3・4・2・0>のトータル戦績もまた素晴らしい。どの競馬場で走っても、どんな相手と走っても、崩れたことがないのだから…。
しかし、これだけの戦績を積み重ねていく過程では、常に周囲から疑いの目を向けられてきた。デビューから5戦でわずか1勝しか挙げられなかったこともあり、
桜花賞では7番人気の低評価。見事にGI初戴冠を果たした後ですらフロック視する声があり、続く
オークスでも3番人気にとどまった経緯がある。
牝馬3冠のかかった
秋華賞は骨折明け。今年初戦の
大阪杯は繋靱帯炎明けに加えて牡馬相手。ともに僅差で1番人気になったとはいえ、戦前はやはり不安の声もあったが…。レースでは阪神内回りの後方という絶望的な位置取りから追い上げ3、2着。終わってみれば「負けて強し」と評価を高めた。
そんな
スターズオンアースの今回(第18回
ヴィクトリアマイル=14日、東京芝1600メートル)の評価は? 牝馬限定戦に戻るだけでなく、
高柳瑞樹調教師が「直線が長くて広いコースで走らせたかった」と話すように、阪神内回りから決め手の生きる東京に替わるのも間違いなくプラス。となれば、今度こそ問答無用の主役? いや、おそらく今回もまた一部から疑いの目を向けられるはずだ。
まずは昨年の
桜花賞以来となる距離1600メートル。近走はスタート後にダッシュがつかず、後方からの競馬になっている。2000メートルで置かれている馬が距離短縮されれば、今回もポジション取りに苦労する可能性はあるだろう。さらには状態面。前走に続いて1週前追い切りに騎乗した
杉原誠人の歯切れが良くないのだ。
大阪杯の前には「まるで一昨年に引退した
グランアレグリアみたい。世界を取れる馬だと思います」と大絶賛していたのに対して、今回は「う〜ん、この前が良過ぎたのもありますし、どうしても求めるものが高くなってしまうんですが、前回と比べると…。点数? 前回が100点とするなら85点。もちろん、このひと追いで変わってくると思いますし、緩んだ感じもなく、息遣いも良かったんですが…」と、まるで奥歯に物が挟まったような口ぶりだった。
だが、しかし。これらをもって評価を下げるのは早計だろう。というのも
スターズオンアースが今回のように前走から中5週の短いスパンで走るのは昨年の
オークス以来。
秋華賞や
大阪杯の前のように長い時間をかけて立ち上げていくケースと、休み明けを叩いてから短期間のうちに放牧を挟んで再度立ち上げるケースとでは感触が違って当然なのではないか。
高柳瑞調教師も「2週前と比べれば、1週前追い切りではよく動けるようになって着実に1段階上向いた感じ。右回りよりも左回りのほうが走りもスムーズだし、このままさらにコンディションを上げていければ」と、さらなる体調アップに自信をうかがわせている。
注目の最終追い切りは主戦・ルメールを背に10日に行われる予定。果たして「凡走の危険」と「好走の期待」、どちらが上回るのか…。鞍上の証言や動きの質をしっかりと見極めながら結論を出したいと思っている。
(美浦のつぶやき野郎・藤井真俊)
東京スポーツ