◆第90回
日本ダービー・G1(5月28日、東京競馬場・芝2400メートル)
泰然自若で夢舞台に向かう。開業21年目の久保田調教師は、
毎日杯覇者の
シーズンリッチ、
プリンシパルSを逃げ切った
パクスオトマニカの2頭で初めて頂上決戦に乗り込む。「緊張感とか高揚感がある。この緊張感を味わいたくてこの仕事をしているんだろうね。でも、緊張しすぎないように。俺1人じゃないから。オーナー、生産者、みんなの思いを背負っている。普段通りを心がけてやっていく」と心に決めている。
ホースマンの最高にして最大の夢がいつも身近にあった。のちに調教師として活躍する父・敏夫氏が、東京競馬場にあった久保田彦之厩舎に当時助手として所属していたため、幼少期は府中で育った。日常に競馬があったとはいえ、ダービーだけは特別だった。「みんなが目指すところ。思いが違う」。大観衆に大歓声…、厩舎地区から見つめた数々のドラマが自身の原点だった。
「2本の矢」で勝ちにいく。
シーズンリッチは、前走を勝つと迷わずここを目標に調整してきた。「鞍上(未勝利勝ち以来のコンビとなる戸崎)は背腰がしっかりしてきたと成長を実感してくれていた。最初に見た時からダービーにいきたいと思っていた」と話せば、
パクスオトマニカも「前走で自分の形を確立できた。牧場で見てオーナーにやらせてくださいと頼んだ馬。2頭ともに、何とか勝てる作戦というかルートがないかを考えたい。そこと向き合っていく残り1週間になる」。熱き思いを胸に秘め、頂点を見つめる。(松末 守司)
◆久保田 貴士(くぼた・たかし)1967年9月17日、茨城県生まれ。55歳。明大時代は馬術部に所属し、87~89年の全日本学生馬術選手権で3連覇。卒業後、英国の厩舎での研修を経て、92年から柴田欣厩舎で厩務員を務め、その後、高橋英、石毛、高橋祥厩舎での助手を経て02年に調教師試験に合格。03年3月に開業し、
JRA通算489勝(重賞はG1・2勝を含む10勝)。父敏夫氏は元
JRA調教師で
ユキノビジンなどを管理。
スポーツ報知