◆第73回
安田記念・G1(6月4日、東京競馬場・芝1600メートル、良)
第73回
安田記念は4日、東京競馬場で行われ、4番人気の
ソングライン(戸崎)が快勝。
ヴィクトリアマイルVからの転戦だったが、G1馬10頭がそろった牡馬相手の豪華決戦も完勝し、国内最強マイラーの座に就いた。今後は優先出走権を獲得したブ
リーダーズCマイル・G1(11月4日、米サンタ
アニタパーク競馬場)に照準を定め、国内外でのG1制覇を目指す。
ゴール前でしのぎを削るラ
イバルを尻目に、馬場の真ん中を鮮やかに突き抜けた。残り400メートル。中団で脚を温存した
ソングラインが戸崎の右ムチでグンとギアを上げた。「最後の脚はあるので自信を持って乗りました」。上がり3ハロン33秒1。信頼を寄せる末脚で強豪たちを続々とパスすると、最後は内で叩き合う
セリフォスと
ジャックドールを一気にのみ込んだ。戸崎からゴール前で早々と出た
ガッツポーズ。1馬身1/4という着差以上のインパクトで、国内最強マイラーを証明した。
様々な偉大な記録に肩を並べた。このレースの連覇は史上3頭目で、
ヴィクトリアマイルからの連勝は09年
ウオッカ以来、2頭目。「いいスタートだったし二の脚も良くていいポジションで運べました」。戸崎は絶妙なエスコートで、
安田記念では21年ぶりとなる18番枠からの勝利へ導いた。
並みの牝馬ではない。林調教師は中2週と短い間隔のなかで、もう一段上を目指した。追い切りは2回とも戸崎騎乗の3頭併せで負荷をかけ、最終追いの翌々日の2日にも美浦・Wコースでラスト1ハロン12秒8をマークした。
「去年の
安田記念よりも今年の
ヴィクトリアマイルよりもさらに状態を上げていってどこまでやれるかという気持ちでした。こういう結果になって本当に夢みたいです」と林調教師。強い負荷をかけてもメンタルやフィジカルが崩れないという成長を感じているからこそだった。強気の采配でつかんだ大きな勝利は通算100勝目。「節目の勝利になったのはうれしいです」と素直に喜んだ。
昨年は米国遠征プランがあったが、喉のアク
シデントで白紙となった。馬主のサンデーレーシング・吉田俊介代表は「今秋は
BCマイルを目標にしたいと思います。一度使ってから本番という形になると思います」と再度の挑戦を明言。圧倒的な強さで国内マイル路線の頂点に立ち、秋は遠くアメリカの地で最上級の輝きを放つ。(石行 佑介)
◆
ソングライン 父
キズナ、
母ルミナスパレード(
父シンボリクリスエス)。美浦・
林徹厩舎所属の牝5歳。北海道安平町・ノーザン
ファームの生産。通算15戦7勝(うち海外2戦1勝)。総獲得賞金は7億6483万5300円(うち海外1億352万9300円)。主な勝ち鞍は富士S・G2(21年)、1351ターフス
プリント・サウジアラビアG3、
安田記念・G1(以上22年)、
ヴィクトリアマイル・G1(23年)。馬主は(有)サンデーレーシング。
<「逆に開き直れました」昨年の
毎日杯騎乗が
戸崎圭太騎手を成長させた> 悔しさを乗り越えて、新たな境地に立てた強さがある。大外の18番枠、馬自身は連覇がかかるG1という数々のプレッシャーをはねのけた戸崎は、ある敗戦が転機になった。
それは昨年の
毎日杯。1番人気の
ドゥラドーレスと自信を持って挑んだが、最内枠から直線は何度も詰まり3着に敗れた。自分を責めて深く落ち込んだが、ある意味で吹っ切れるきっかけになったとも言う。「これ以上ひどい乗り方はないと、逆に開き直れました。そこから記録とかそういうものは気にせず、自分が納得して楽しんで乗ろうと思えるようになりました」
自ら意識してレースに臨むメンタルを切り替えたことで、昨年は勝率、騎乗回数などの総合点で決まる
MVJを6年ぶりに受賞した。今年も自身8年ぶりとなるG1・2勝目をマーク。ゴールの瞬間にしっかりとつくった笑顔と
ガッツポーズに“楽しさ”が詰まっていた。
スポーツ報知