2018年の
凱旋門賞に出走(17着)した
クリンチャー(牡9歳)が6月17日、函館競馬場で誘導馬として第2の“馬生”を歩み出した。本紙は同28日の紙面で紹介したが、管理していた
宮本博調教師にとってもうれしい第一歩だったようだ。函館開催初日前日の6月9日、大雨のなかで約6か月ぶりに再会。「『誰?』って感じで知らん顔されたわ」と“塩対応”に苦笑いを浮かべたが、新天地で立場を替え、再びターフに戻って来た姿を見て、どこか誇らしげだった。
宮本師の
クリンチャーに対する愛着の深さを感じたのは昨年末。翌週に
有馬記念を控えた12月18日だった。競馬が開催される日曜日にもかかわらず早朝から厩舎を訪れ、退厩する
クリンチャーを見送るトレーナーの姿があった。
「重賞をたくさん勝たせてもらったし、
凱旋門賞にも行かせてもらった。いろんな経験をさせてくれた」。17年の牡馬クラシック3冠すべてに参戦し、
菊花賞は2着。18年
京都記念、20年
みやこSなど芝、ダートを問わずに活躍し、地方交流を含む重賞5勝を挙げた。G1タイトルに手は届かなかったものの、8歳まで息の長い活躍を続けたことに「厩舎を支えてくれた」と感謝。現役時代から「のんびりして、すごくおとなしかった」といい、誘導馬に必要な資質も持ち合わせていたという。
トレーナーは当初、
クリンチャーの“再デビュー”が函館の1週目と聞いていたため競馬場に足を運んだが、翌週にずれこみ、スケジュールの都合が合わず残念ながら立ち会えなかった。とはいえ、今後も函館競馬場にさえ出向けば、誘導馬として活躍する姿を見ることができる。「優等生でかわいがってもらってるみたいだし、励みになるよね」。手もとを離れても、温かく見守り続けるつもりでいる。(
中央競馬担当・戸田 和彦)
スポーツ報知