2019年以来の中京開催となる
中京記念(23日=芝1600メートル)の登録を見て「アレッ?」と思われた方もいるのではないか。ダート替わりの前走・
薫風S(3勝クラス、東京1600メートル)をいきなり制した
ベジャールの名前があるからだ。
芝スタートの前走はスッと1列目の後ろのポケットに収まると、鞍上・川田は直線で前が空くのを待って追い出した。反応良く脚を伸ばして差し切り勝ち。ゴール前で後続に迫られたが、これが初ダートとは思えないスムーズなレース運びで適性の高さを感じさせた。
上級条件からのダート転向でいきなり好走する馬はその後、爆発的に素質が開花することがある。例えば
マルシュロレーヌ。3勝クラスからダートに転向し、わずか1年3か月でダートの本場アメリカのG1・BCディスタフの王者に。
ウシュバテソーロも3勝クラスでの転向から、1年たたずにG1ドバイワールドCを制した。
ジュンライトボルト、
ギルデッドミラーしかりだ。
陣営は先例を百も承知のはず。ならばなぜに芝に戻すのか。田中博調教師は「ダートの方がベターですが、賞金的に入る適鞍がないんですよ。そこで芝のマイルなら足りるのではと考えました」と説明。「体の
バランスに左右差があり左回りにこだわっています。器用ではなく、大ざっぱな競馬が合いますね。ここで適性を見極めたいです。秋を見据えて賞金面で何とかしたいですね」
芝競馬でも広くて左回りの中京なら、ハンデ重賞だけにチャンスがあっても、というわけだ。賞金面での不利を克服して現状を打破するには、知恵と工夫を凝らす必要があるのだ。
幸い、この馬にはスローの東京芝マイルで上がり33秒台を繰り出した実績がある。3歳時には苦手とする右回りの
毎日杯(阪神芝1800メートル)で0秒1差2着しており、元値は相当に高い。
レース選択の幅を広げるには、ここで賞金を加算することが必須条件。前出の一流ダート馬たちに続く存在になれるか。秋の飛躍へつなげるには、この一戦が試金石となる。
(美浦の二刀流馬注目野郎・垰野忠彦)
東京スポーツ