散り際の線香花火のような、あの儚い北海道の夏を返してほしい。お盆明けまで居座って、あろうことか札幌に観測史上最高気温の猛暑日をもたらすなど、今年の夏はとんだ無法者である。無論、人にとっても耐え難い暑さだが、馬にとってもまた大変な気候であることは間違いない。取材をしていても、各陣営が馬の夏負け対策に苦心しているのが伝わってくる。もうしばらくは、そういった点も留意してパドックを観察する必要があるだろう。
さて、そんな中、ホッカイドウ競馬では、史上7頭目の三冠馬誕生が目前に迫っている。
北斗盃、
北海優駿と圧勝を重ねてきた
ベルピットが、ついに三冠最後の
王冠賞を迎えた。実力で勝ち取ったここまでの二冠であり、そこに疑いの余地はない。今回の外回り1800mも、
JBC2歳優駿で2着した舞台だから、能力発揮に支障はないだろう。偉業達成は目と鼻の先である。
ただ、そう思われた昨年の
シルトプレも、この
王冠賞では、前2戦で負かしていた
エンリルに逃げ切りを許してしまった。過去を遡っても、同様のケースは複数ある。
ベルピット中心という見方は間違いないとしても、よもやの可能性を考えておいて損はない。
ベルピットに最も接近している存在として、
ニシケンボブは外せない。
北斗盃、
北海優駿ともに2着だが、
ベルピットとの着差は大きく縮まっている。古馬のA級相手に楽勝した前走で一段と
パワーアップした感があり、今回は更に際どく迫れるだろう。新興勢力では、自己条件で逃げ足に磨きをかけてきた
ディーエスエールも脅威になり得る。前2戦は先行勢が手薄だったため、3コーナーで楽に先頭に立つような運びだった
ベルピットだが、今回は、
ハイラップで引っ張るこの馬の逃げに対処しなければいけない。
他では、
北海優駿3着の
ズンガリプテルス、前走の短距離重賞2着で復調を示した
ディオスメッセージもマークが必要だろう。歴史的な暑さにはもう勘弁願いたいが、歴史的な記録が懸かったこのレースは、歓迎すべき熱戦である。
(文:競馬ブック・板垣祐介)