◆第57回
スプリンターズS・G1(10月1日、中山・芝1200メートル)
23年秋のG1シリーズは10月1日、第57回
スプリンターズS(中山)で開幕する。馬トクではいまも取材班それぞれの脳裏に焼き付く名勝負や名馬などの物語を、各G1の出走馬に絡めながら随時紹介していく。秋の電撃戦で東京本紙予想担当・西山智昭記者が導き出した一頭は
ミッキーアイル。産駒の
ナムラクレア、
メイケイエールが初G1制覇で父の無念を晴らすのか―。
今年の登録馬をじっくりとチェックすると、
ナムラクレア、
メイケイエール2頭の父が目に留まった。
ミッキーアイル―。現役時代にPOGで指名したところ、5連勝で14年の
NHKマイルCを制覇。“G1オーナー”の気分にさせてくれた忘れられない馬だ。
印象に残っている出来事がある。
NHKマイルCのレース後、会見場に姿を見せた音無調教師はニヤリと笑いながら、「新聞を見たら◎が少なかったから心配したけど、ファンが一番分かっているということですね」と記者を見渡して言った。単勝1・9倍の1番人気ながら、スポーツ報知の出走表(関東版)で◎を打ったのは私だけ。他紙にも◎は少なかった。苦笑いの先輩、同僚らを横目に、少し誇らしい気持ちになったのを覚えている。
東京の長い直線でも逃げ切ることができた卓越したスピードの持ち主だったが、1200メートルのG1は〈3〉〈4〉〈7〉〈2〉〈2〉着でタイトルに縁がなかった。最も惜しかったのは16年の
スプリンターズSだ。スタートでややもたついたが、二の脚で挽回。ハナに立ってからはリズムよく運び、直線も粘りに粘ったが、ゴール寸前で
レッドファルクスに頭差かわされて2着に敗れた。
この10年で逃げ切った馬は一頭もいないが、着差を考えると、ゲートさえ五分に出ていればと思わずにはいられない。過去を変えることはできないが、父の無念を子が晴らすことは可能だ。今年のメンバーでG1馬は
ピクシーナイト、
ナランフレグ、
ドルチェモアの3頭のみ。これらの近走成績がさえないことを考えると、新たなG1馬が誕生する可能性が高いとみている。
産駒2頭を比較すると、昨年0秒2差(5着)で、今年は6ハロンの3戦いずれも連対している
ナムラクレアの近況が明らかに充実している。6ハロンでは一度も勝てなかった父とは対照的に、重賞4勝を含む全5勝。新女王になれる実力は十分ある。予想はもちろん冷静に分析しなければいけないが、父
ミッキーアイルに産駒初のG1をプレゼントする瞬間を、見たい気持ちもある。(西山 智昭)
スポーツ報知