笑顔でターフに別れを告げた。今年のサウジCで世界を制した
パンサラッサなどを担当した矢作厩舎の池田康宏厩務員(65)の約50年に及ぶ厩務員人生が、今月9月いっぱいで終わる。担当馬の最後のレースは9月16日の阪神12R。
インヒズアイズで2着だった。「最初のレースも2着だったし、最後も2着。G1で2着も多かったし俺らしいね」。思い出の詰まった阪神競馬場でピリオドを打てたことが何よりだった。
競馬の世界に飛び込むきっかけになったのも幼少期を過ごした同競馬場だった。父・康雄さんが厩務員だったこともあり、栗東トレセンが完成するまでは近くの兵庫・宝塚市内の仁川小学校と小浜小学校に通った。父に連れられ、訪れた1973年の朝日チャレンジC。応援していた
タニノチカラが勝利し、検量室前で田島日出雄騎手(当時)から手渡された熱気を帯びた優勝馬の勝ち鞍の感触は今でも忘れない。「何て夢のある世界なんだ」。競馬に魅了され、その後の人生が決まった。
1974年から厩務員生活が始まり、担当馬で積み重ねてきた勝利数は136。「父親が
バンブーライトで(担当馬の)初勝利を飾ったのも阪神だし、自分が
ショウテンザンで初勝利をマークしたのも阪神」。第一歩を刻んだのも、この場所だった。偶然にも解散する05年まで所属した松永善晴厩舎と、その後に所属した
矢作芳人厩舎での勝ち星は68勝ずつだという。“ラストラン”は勝利で飾ることはできなかったが、レース後にはファンからの「ご苦労さま」という歓声に手を振って応えた。「ありがたいよね。あの感動は忘れられない」と頭を下げた。
今後は趣味のゴルフや温泉巡りで骨休めすると言う。栗東トレセンで、愛きょうたっぷりな軽快なトークが聞けなくなるのは残念だが、野球観戦も大好きな池田さん。甲子園や京セラDなど記者の住む大阪の近くに来た際は、ぜひ飲みに誘って下さい。
(
中央競馬担当・戸田 和彦)
スポーツ報知