11年ぶりの天覧競馬となった第168回
天皇賞・秋・G1は29日、東京競馬場の芝2000メートルで行われ、単勝1番人気の
イクイノックスが好位追走から楽々と抜け出し、1分55秒2の
JRAレコードで圧勝した。史上3頭目の秋の盾連覇、G15連勝に導いた
クリストフ・ルメール騎手(44)=栗東・フリー=はレース後、観戦された両陛下に馬上で最敬礼した。
感動のシーンが待っていた。
ウィニングランでゆっくりとゴール前に戻ってきた
イクイノックス。天皇、皇后両陛下が観戦されるスタンドに向かって、世界最強馬にまたがったルメールが脱帽した。「僕にとって天皇賞は大事なレースなので勝ててよかったです」。最敬礼すると、コ
ロナ禍以降で最多となる7万7870人のファンの温かな拍手に包まれた。
11年ぶりの天覧競馬。その大一番にふさわしい、歴史に残るレースだった。ゴールの瞬間、電光掲示板に表示された数字は“世界レコード”の1分55秒2。異次元のタイムに場内は地鳴りのような歓声に包まれ、スタンドへの投げキスで勝利をアピールしたルメールは「時計を見てびっくりしました」と興奮気味に振り返った。
レースは逃げ馬の
ジャックドールがペースを握る展開。
イクイノックスは前半1000メートルが57秒7の超ハイペースを3番手で追走した。通常の馬ならバテてしまうところだが、「世界一の馬」(ルメール)に常識は通じない。直線で軽く促されるとさらに加速。前の馬を一瞬でかわすと、後方から迫る追い込み勢も振り切り、2馬身半差をつけて勝負を決めた。「すごい脚だった。ラスト200メートルくらいで勝ったなと思いました」と多くの名馬の背中を知る鞍上も、驚きを込めて賛辞を贈った。
天皇賞・秋の連覇は3頭目。19、20年にはのちにG19勝する
アーモンドアイが達成したが、その時も鞍上はルメールだった。「家族」と呼ぶほど思い入れのある名牝との比較を聞かれ、「両方とも全てを持っている、ほとんど完璧な馬。
イクイノックスも大事な家族になってきましたし、今回のレースでさらに世界的なスーパースターになったと思います」と、ともに最高の相棒であることを強調した。
次走は
ジャパンC(11月26日、東京)を予定。今年、牝馬3冠を達成した
リバティアイランドとの初対決になるが、「3冠馬は
リスペクトしないといけないけど、自信はあります。
イクイノックスはここからが
ピークになる馬。素晴らしいレースができると思います」と胸を張った。勝てば
アーモンドアイを超えるG1のみでの6連勝となる。世界の競馬史にまた偉大な一ページが刻まれそうだ。(角田 晨)
◆過去2回の天覧競馬
▽05年
天皇賞・秋 戦後初の天覧競馬として施行され、単勝14番人気の
ヘヴンリーロマンスが鋭く伸びて3着までタイム差なしの接戦を制した。牝馬では97年の
エアグルーヴ以来8年ぶりの勝利。現調教師の
松永幹夫は
ウィニングランの後、メインスタンド前へ向かい、
ヘルメットを脱いで馬上から当時の天皇、皇后両陛下に最敬礼をした。
▽12年
天皇賞・秋 単勝5番人気の
エイシンフラッシュが内から鋭く伸び、1番人気
フェノーメノの追撃を半馬身抑えて、10年
日本ダービー以来2年5か月ぶりとなるG12勝目を飾った。初コンビのMデムーロはメインスタンド前へ引き揚げてきた際に下馬。
ヘルメットを脱いで片膝をつき、当時の天皇、皇后両陛下に最敬礼した。
◆芝2000メートルの世界レコード 海外を含めた芝2000メートル戦の世界レコードは、99年9月26日にチリのクラブイピコデ
サンティアゴ競馬場で行われたナシオナルリカルドリオン賞・G1で
クリスタルハウスが記録した1分55秒4とみられている。
イクイノックスが従来の国内記録(11年
天皇賞・秋で
トーセンジョーダンが記録した1分56秒1)を0秒9更新した
JRAレコードの1分55秒2は、それを0秒2更新した形だ。
スポーツ報知