秋競馬の
ハイライトともいえる
ジャパンカップ(3歳上・GI・芝2400m)の開催が、いよいよ今週末に迫っている。今年は
イクイノックスなど、歴代屈指ともいわれる超豪華メンバーが集結。そして、
地方競馬から
クリノメガミエース(牝4、兵庫・
石橋満厩舎)と
チェスナットコート(牡9、兵庫・
田中一巧厩舎)の2頭も参戦を予定している。
「
ジャパンC×地方馬」で印象深いのが、1985年の2着馬
ロッキータイガーだ。まだまだ外国馬が優勢だった時代に“世界超え”、さらに皇帝
シンボリルドルフに迫った地方からの刺客――といえば、そのすごさが伝わるのではないだろうか。同馬の主戦で、現在はNAR
地方競馬全国協会参与を務める桑島孝春氏に、当時のことや地方馬の海外挑戦について聞いた。
桑島氏は
ロッキータイガーのことを「レースセンスの良い馬」と表現。直線切れる馬だったが、芝で通用しそうな気配は全くなかったという。
ジャパンCの選考レースとなった
東京記念については、「レース前は先のことなんて考えてなかった。
テツノカチドキが選ばれると思っていた」「ゴールして引きあげてきたとき、厩務員さんに『もしかして、次は府中か!?』といわれて初めて気がついた感じ。
ジャパンCは全く無意識だったよ」と、声を弾ませながら振り返る。
人馬ともに初の大舞台。“勝負”を意識したのはレース当日、先輩ジョッキーからかけられた言葉だったという。「『馬場悪いからお前の馬チャンスあるよ。自信持って乗ってみな』そう言われて気が楽になった」。ただ、あくまでも普段通りの
ロッキータイガーを意識したとも話す。「だから最後方から運んだ。岡部さん(
シンボリルドルフ)についていって、どこまでやれるかなという感じ」。勝負は何があるかわからない。「大事に乗ったら2着だった。何が一番嬉しかったって外国馬に負けなかったことだよね」と懐かしんだ。
ロッキータイガーの挑戦から約40年が経過し、現在では地方馬が世界に出向いて挑戦する立場になった。今春には
マンダリンヒーローがサンタ
アニタダービー(米G1)でハナ差2着に大健闘。桑島氏も「素晴らしいよね。(着差を改めて聞いて)うわぁ〜惜しいなぁ」と、嬉しさと悔しさが入り混じった様子。続けて「
マンダリンヒーローで(地方にとって)明るい兆しが見えてきたよね。みんな刺激を受けたんじゃないかな」とコメントした。地方馬による海外挑戦の今後の増加については、「十分あるでしょう。増えてもらいたいね」と力を込めた。
地方馬の大舞台挑戦という意味では、
ジャパンCに出走する2頭も同様。「地方馬の姿を見られることは嬉しい」「園田のダート・右回りと、府中の芝・左回りでは、条件も大きく違うけど、同じ競馬には違いはない。頑張ってほしい」とエールを送った。「育成や生産から競馬界一体となっているので、地方・中央、両者の垣根はなくなっている」と語る桑島氏。地方馬の活躍や挑戦は、中央へ、海外へと広がりを見せる現状に、「見応えがあるよね。しっかり見届けないといけない」。レジェンドもそのチャレンジを見守り続ける。
◆桑島孝春(くわじま・たかはる)
71年に騎手としてデビュー。船橋所属馬を中心に南関東のスターホースに数多く騎乗し、10年までに通算40,223戦4713勝(うち重賞86勝)の成績を残した。騎乗数は18年に
的場文男騎手が更新するまで歴代1位。騎手引退後はNAR
地方競馬全国協会参与として、後進の育成、および
地方競馬の発展に寄与している。