【競馬人生劇場・平松さとし】2022年の
ドバイターフ(G1)は日本でも馬券が発売された。圧倒的1番人気に推されたのは
シュネルマイスター。しかし、応援の意味も込めてか日本馬偏重が強くなるのを見込み、私が本命に推したのは英国馬
ロードノースだった。
レースは
パンサラッサの果敢な逃げで始まった。直前の
中山記念でも見せた
ハイラップの逃走劇。彼の代名詞ともなる走りだった。
しかし、当時の同馬の主な勝ち鞍は
福島記念(G3)と
中山記念(G2)くらい。いずれも先行有利の小回りコースで、
ドバイターフの舞台とはかけ離れていた。前年の
オクトーバーSは東京の芝2000メートルという条件で逃げ切っていたが、当時頭差まで迫った2着馬はその後、1着どころか連絡みすらなく、正直相手に恵まれたと思えた。鞍上の
吉田豊騎手とは彼のデビュー時から約30年の付き合いがあり、このドバイでも毎日一緒に過ごしたが、馬券に情はかけられない。冷静に判断して、△止まりとなった。
しかし、4コーナーを過ぎ、直線に向いてもリードを保つ姿を見て、自分の馬券などどうでもよいから
吉田豊騎手と
パンサラッサを応援した。ゴール直前、◎を打った
ロードノースが2番手から一気に差を詰めてきたのが分かった時でさえ、逃げ切りを祈った。最後は
ヴァンドギャルドを交えて3頭が横一線でのゴール。長い写真判定の間、
吉田豊騎手と過ごし「どうか残っていますように!!」と願い続けた。
結果は皆さんご存じの通り。なんと
ロードノースと1着同着。自身初めてとなる海の向こうでのG1制覇を果たした
吉田豊騎手は、
ロードノースを操ったL・デットーリ騎手と共に表彰台へ上がり、抱き合って健闘を称えたのだ。
パンサラッサは今年、サウジC(G1)も逃げ切った。現在48歳の
吉田豊騎手。残念ながら騎手人生も大詰めとなってきたのは疑いようがないだろう。そんな中、彼の存在を世界に知らしめてくれた
パンサラッサがターフを去ることになった。
吉田豊騎手の「感謝しかないです」という最後の言葉が胸に響く。 (フリーライター)
スポニチ