JRAは7日、24年度新規調教師免許試験の合格者9人を発表した。スポニチでコラム「
田中勝春この1頭」を連載するカッチーこと
田中勝春(52)が3度目の受験で難関を突破した。今月末で騎手を引退し、
JRA通算1809勝の名手は新たな道へ進む。同1056勝の
秋山真一郎(44)も合格。また坂口厩舎の女性調教助手・
前川恭子さん(46)が合格し、来年1月1日付で
JRA史上初の女性調教師となる。
トレードマークの笑顔が輝いた記者会見。「34年以上騎手をやってきて、最近はだんだん下手になって…これ以上迷惑をかけられない」と会場の笑いを誘う。そして「経験を生かして調教師を目指そうと思いました」と語る52歳の表情は晴れやかだった。
歴代12位の
JRA通算1809勝。重賞は51勝。
ヤマニンゼファー(92年
安田記念)、
ヴィクトリー(07年
皐月賞)で
JRA・G1を2勝、
シャドウゲイトと海外G1(
シンガポール航空IC)も制した。思い出の馬に挙げた
バランスオブゲームとのコンビではG2を実に6勝。「毎日調教に乗って思い出深い。気性が激しい馬で、随分教えてもらって、助けてももらった。今があるのはあの馬のおかげ」と懐かしんだ。
50歳を迎えた3年前から試験に挑戦。「乗鞍が減った時期に、四位先生(が合格したこと)にケツを押された」。三度目の正直で難関を突破。今月限りでステッキを置く。目標にして憧れは騎手&調教師として成功を収めた野平祐二氏。「格好いい方だった。先生も晩年に転身して
シンボリルドルフという名馬を育てられた。僕も一頭でも多く、ルドルフのような馬を育てて競馬の発展に尽力したい」と表情を引き締めた。
会見では随所にカッチー節が散りばめられた。冒頭で紹介した自虐に始まり、理想の厩舎像は“相撲部屋”と回答。「一生懸命稽古して、一生懸命食べて、一生懸命休む。それが馬にとっていい」。続けて、「ラ
イバルの尻尾に食らいついてでも追いかけるようなしぶとい馬、皆が見ていて楽しい馬を育てたい」と個性派育成に熱意を見せた。
オフィシャルな会見を終えると、笑い声を押し殺していた記者に「会見中ももっと笑ってくれよ。めちゃくちゃスベったみたいだったじゃん!!」と豪快に笑ったカッチー。個性派トレーナーの誕生に、美浦トレセンは祝福ムードに包まれていた。
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藤沢和雄氏(元
JRA調教師) 本当に良かった。古い話ですが、私の結婚式の仲人は藤原敏文調教師(故人)で、その弟子の勝春とは騎手デビュー当時からの付き合い。応援していきたい。
▼岡部幸雄氏(元
JRA騎手) 勝春くん、おめでとう。彼は馬に乗るだけじゃなく、馬の扱いも知っている。小さい頃から馬と一緒に過ごしてきた経験は大きい。70歳の調教師定年まで15年以上。やりたいことが存分にできるはず。頑張れ!
▼宗像師(
バランスオブゲームを管理) 勉強をしっかり頑張っていたので、結果が出て本当に良かった。これで少しはゆっくりできるでしょう。調教師として一つずつ積み重ねていき、大きなところを獲ってほしいです。
◇田中 勝春(たなか・かつはる)1971年(昭46)2月25日生まれ、北海道出身の52歳。89年に美浦・藤原敏文厩舎所属で騎手デビュー、同年10月21日に東京6R(
セキテイボーイ)で
JRA初勝利。
JRA通算2万643戦1809勝、うち重賞51勝(G1・2勝)。1メートル55、51キロ。血液型AB型。趣味はゴルフ。
≪美浦トレセンは柄崎助手父子3代≫美浦トレセンでは、元騎手の
柄崎将寿助手(40)と、
浅利英明助手(38)が合格した。柄崎助手は祖父・義信さん、父・孝さんに続く父子3代
JRA調教師。「この先の人生を調教師として馬と関われることをうれしく思います。この合格を祖父に報告したい」と5度目の受験での合格を喜んだ。浅利助手は在籍する加藤征厩舎で担当した
ノンコノユメが18年フェブラリーSを優勝。「あの馬に携われたことが人生の自信になった。この会見の席にいられるのは
ノンコノユメのおかげ」と感謝を口にした。
◇柄崎 将寿(つかざき・まさとし)1982年(昭57)12月27日生まれ、茨城県出身の40歳。01年美浦・尾形充弘厩舎から騎手デビューし、通算1105戦33勝。10年に騎手を引退し、美浦・
柄崎孝厩舎で調教助手に。12年から
和田正一郎厩舎、16年から
古賀慎明厩舎。
◇浅利 英明(あさり・ひであき)1985年(昭60)10月21日生まれ、神奈川県出身の38歳。09年
JRA競馬学校入学。13年から美浦・栗田博憲厩舎で調教助手。14年から
加藤征弘厩舎。過去の担当馬に
ノンコノユメ(18年フェブラリーSなど)。
スポニチ