◇馬
チェロレッテ
美浦のアイドルは引き立て役では終わらない。G1水曜企画「馬(バ)
チェロレッテ」では前線記者が買いたい馬の魅力をアピールして「真実の馬券」に迫る。田井秀一記者(30)が推す
ライラックはファン投票により出走枠を勝ち取った。母やきょうだいも担当した三尾一之助手(47)の愛情と、ファンの熱烈な思いを背に、
グランプリの大舞台に立つ。
フルゲート「16」の出走枠に20頭がエントリーした今年の
有馬記念。
ライラックの出走馬決定賞金順は18番目で、本来なら除外対象。しかし、彼女は有馬に出る。ファン投票上位10頭に与えられる優先出走権を獲得。1万5606票の熱い思いが、
ライラックを
グランプリのスター
トラインに押し上げた。
担当の三尾助手は「ファンの方々のおかげ。(相沢師が)早めに出走表明したのが効果的だったし、友人もSNSを通じて熱心に呼びかけてくれた」と感謝する。続けて「お兄ちゃんのおかげもあるのかな」。半兄
ブラックホール(19年
札幌2歳S優勝)は引退後、相馬野馬追に参加する乗馬に転身し、X(旧ツイッター)で1万以上のフォロワーを誇る人気者。
インフルエンサーとなった兄の援護射撃も大きかった。
厩舎ゆかりの血統。三尾助手は兄妹の
母ヴィーヴァブーケも現役晩年に担当。「お父さん(
オルフェーヴル=11年3冠馬。
グランプリは11、13年
有馬記念、12年
宝塚記念で3戦3勝)のイメージと違って性格は素直で手がかからない。お母さんの良さを引き継いでいる」。好きなものは
ニンジンとカメラ。レンズを向ければ、鼻面を近づけ愛嬌(あいきょう)を振りまく。くりくりした瞳も相まって、さながらアイドルだ。
一方で、「嫌いなものはオレ」。競馬が近づくと戦闘モードに突入。三尾助手に飛びかかることも。「競馬を使った後は全然大丈夫なんだけど…。オンオフが凄くはっきりしている。物分かりが良すぎるぐらい」。デビュー2戦目の
京都2歳Sでは馬運車に入ることを拒否し約1時間にわたって格闘。だが、練習を重ねた次戦以降はすんなり入るようになった。「嫌なことは嫌!とはっきりしていて我は強いけど、納得しちゃえば大丈夫。学習能力が高い」と分析する。
実力は折り紙付き。特に上がり時計がかかる中山を得意としており、昨年1月の
フェアリーSでは
スターズオンアースを差し切った。「ゆったり走れる中山はいい。牝馬の中では
トップレベルに位置していると思う」とG1馬8頭を相手に回しても気後れはない。
「初めて出たダービー(01年
マイネルライツ=13着)は除外対象から急きょ繰り上がって、緊張でおなかが痛くなった。人間が硬くなってもろくなことはない。平場でも
有馬記念でもやることは同じ」。ダービー3度出場の経験を糧に、三尾助手は平常心で愛馬に寄り添っている。ドリームレース出走を後押ししたファンへの恩返しは結果で示す。十八番(おはこ)の高配当で。
《アイ称は「社長」》
ライラックの取材中、隣の馬房からは半弟
アドミラルシップが顔をのぞかせた。三尾助手が牧場時代の幼名から“金太郎”と呼ぶ2歳馬は
有馬記念4日後のG1
ホープフルSに出走予定。「まだ伸びしろがたっぷり。攻め馬をびっしりやっていない中、新馬戦であれだけのレースができた」と上積み十分だ。ちなみに、
ライラックの呼び名は「最初は
ラッキーライラック(ファンに“
ラララ”の愛称で親しまれる)をまねて“ララ”だったけど、今は賞金をいっぱい稼いでくるから“社長”」だとか。社長と金太郎の姉弟G1連勝にも期待がかかる。
スポニチ