昨年のチャンピオンズC終了後、デイリースポーツのご意見番である尾形充弘元調教師がこんなことを話されていた。
「
ウシュバテソーロも強いけど、この勝利で最優秀ダート馬のタイトルは
レモンポップで確定かな?ただ、今のダート路線は海外や地方へ分散されるため、
フェブラリーSとチャンピオンズCの価値が少しぼやけてしまうように感じるのは残念。JRAのG1として、番組体系をしっかりと整備してほしいなと個人的には思います」
ご存じの通り、23年度の
最優秀ダートホースのタイトルは166票を獲得した
レモンポップに輝いた。僅差の126票を得た
ウシュバテソーロは特別賞を受賞。結果として、JRA・ダートG1の価値を重視した有権者がわずかに上回ったが、地方と海外で大活躍した
ウシュバテソーロとの二者択一に頭を悩ませた方も多かったことだろう。
そして先日、
ウシュバテソーロのサウジC参戦が決定した。同レースには、既に
レモンポップも招待を受諾しており、JRAが誇るダート2強が異国の地で初対戦を迎えることとなった。この夢対決に、SNSでは「これは楽しみ。こういう戦いが見たいのよ」「1800メートルはお互いの最適距離の中間だから、いい勝負になりそうだ」「激アツ。川田と坂井で勝負するのも楽しみ」とファンは興味津々。両陣営ともに、状況次第ではドバイへ転戦して即再戦する可能性もあり、今後の動向から目が離せない。
その一方で、尾形氏が危惧するように、
フェブラリーSの存在意義が問われる状況となった。ファンの間でも「
フェブラリーSは考えた方がいい。みんな有力馬はサウジに行くよ」「2強が海外へ。空き巣となった今年はどの馬が勝つんだ?」と言う辛辣な声もあれば、さらに一歩踏み込んで「この際、
皐月賞と
天皇賞・春のはざまの週にダートG1をぶっ込んだらいいのに」と提案する人もいた。
主催者サイドも対策を講じており、22年11月に
地方競馬主催者、全国公営競馬主催者協議会、日本
中央競馬会(JRA)、
地方競馬全国協会(NAR)の合同で「全日本的なダート競走の体系整備」に関する記者会見を行い、古馬路線は
さきたま杯が6月中旬開催のJpn1に昇格され、
川崎記念が1月下旬から4月上旬に開催時期を変更すると発表。しかし、抜本的な改革になったとは言いがたい。
地方競馬とのすみ分けもあるだけに、この問題を即解決するのは容易ではないが、JRAが誇るダート2強の頂上決戦が、
フェブラリーSではなくサウジCで行われることは事実だ。主催者サイドは今後もこの流れを受け入れるのか、あるいは思い切った改革に乗り出すのか、決断の時が来たように思う。
方向性次第では、
JRA賞の選考基準も変わってくる。昨年はJRA・ダートG1をコンプリートした
レモンポップに軍配が上がったが、これから国際化が加速すれば、海外遠征の価値を上と見る人はさらに増えることだろう。投票権を持つ私も悩ましいところ。まずは、存在価値がぼやけつつある
フェブラリーSのあり方が、今の日本競馬に問われている。(デイリースポーツ・松浦孝司)
提供:デイリースポーツ