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調教助手からエージェントへ 56歳で“新たな扉”開く

スポニチ
  • 2024年02月14日(水) 10時10分
 日々、トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は今回、栗東取材班で大ベテランの菱田誠(64)が担当。定年解散となる加用厩舎のスタッフである蓮見(はすみ)博和助手(56)は異色のセカンドキャリアに挑戦、JRAの調教助手を辞めて騎手のエージェントを目指す。

 調教師とはプロ野球でいえば監督に相当する花形の職業。70歳の定年を迎えた調教師がホースマン人生を振り返る中でG1の舞台裏や、エピソードの記事はやはり読むに値する。

 一方で解散厩舎のスタッフにも、それぞれに移籍する厩舎があるわけだが、紙面で報じられることはない。今回、あえて蓮見助手をクローズアップする理由は別の仕事を選択するからだ。騎手の騎乗依頼仲介業のエージェントを目指すという。

 「この世界に入って今年で41年目。やり尽くした感はあるよ。腰のヘルニアを患ったし、馬乗りが下手になったかな。厩舎の解散を機に新しいことにもチャレンジしようか、と思ってね。エージェントは騎手をサポートする仕事だし、以前から興味があった」

 父親が厩務員で滋賀県出身。金勝(こんぜ)小学校→栗東中学校の出身で俗称「トレっ子」。武豊が1歳下の年代だが、蓮見助手は「ユタカの兄貴に克己というのがいるんやけど彼には何をしても勝てんかった。運動も勉強も凄かった」と同級生ネタには一流企業で出世している武豊の兄を挙げた。ならば…と脱線ついでに武豊に振ると「兄貴に付いて行って蓮見さんとよく遊んだよ。結構ヤンチャやった」の含み笑いに武勇伝の一つや二つありそうな感じだ。

 83年にトレセン入りし、小林稔厩舎に始まり荻野厩舎を経て、加用厩舎のスタッフとしては開業から解散を迎える現在に至る。「G1馬の背中にまたがることはなかったけど、人や環境には恵まれた。それは財産」と感謝。この世界で大きな影響を受けた人物が同じ厩舎の先輩で藤原敬弘(としひろ)助手の名を挙げた。藤原英昭師の兄で「全て尊敬できる人」(蓮見助手)と、このひと言が藤原助手の人柄を物語っている。

 さて、転身する職業のエージェント。水面下で動いておらず、現時点で契約する騎手は決まっていないそうだ。人ごとながら無鉄砲過ぎやしないか?と心配になるが「長年、住んだ社宅は出ることになる。まずはそこから。エージェントの仕事に就けば頭を下げることに慣れないとね」と笑うばかり。JRA調教助手からエージェントへの転身となれば、おそらく第1号。覚悟と行動力にエールを送りたい。

 ◇菱田 誠(ひしだ・まこと)1959年(昭34)7月1日生まれ、神戸市出身の64歳。スポニチ入社以来、一貫してレース部に在籍。競輪記者を経て、競馬記者歴は今年で29年目。香辛料の摂取量が半端ではない激辛党。

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