3月と言えば様々な立場の卒業が増えるシーズンだが、競馬界は一足早く今週から8名の新人騎手がデビューする。とはいえ、当然ながらというべきか、今週末に開催される3つの重賞への騎乗はない。
しかしながら27年前、デビューウイークに重賞に騎乗し、さらには初勝利を挙げた騎手がいた。97年の
マイラーズCを
オースミタイクーンで制した
武幸四郎騎手(現・調教師)である。その偉業を振り返ってみよう。
その注目度は前年にデビューした
福永祐一騎手に勝るとも劣らないものだった。父はターフの魔術師と称された武邦彦調教師。10年前にデビューした兄の
武豊騎手は、当時既にトップジョッキーとして君臨していた。それだけに話題を、そして期待を集めるのは当然。デビューウイークの2日間で14鞍もの騎乗馬を集めた。
しかし、当然ながらというべきか勝負の世界は甘くない。初騎乗は6着。その後も悔しいレースが続いた。13鞍が終わった段階で3着が1回あるのみ。そして迎えたのが
マイラーズCだった。騎乗馬は父が管理する
オースミタイクーン。当時は8カ月の休み明け。近走成績から見ても、14頭立ての11番人気という低評価は仕方なかった。
ところが、
オースミタイクーンは直線で馬場の中程からジワジワ伸びると、残り1F過ぎに先頭へ。そのまま後続の追い上げを凌ぎ、先頭でゴールしたのだ。
武幸四郎騎手は驚きと喜びがまじったような表情。それもそのはず、デビューから僅か2日で重賞制覇という
JRA史上初の快挙を成し遂げたのだった。
ちなみに
マイラーズCの5分前にスタートした中山の
弥生賞は、兄・
武豊騎手が騎乗した
ランニングゲイルが圧勝した。
弥生賞の表彰式の最中、
武豊騎手は弟の大仕事を知って笑顔で拍手。そんなシーンも多くのファンの記憶に残っているに違いない。