1月某日、美浦トレセンに大手牧場の重鎮の姿が。これはまたとない機会と思い、気になっていた質問をぶつけてみた。
「ウマ娘の影響力は、現場でも感じ取っていますか?」
いまさらながら、話題の『ウマ娘 プリティーダービー』について説明したい。公式サイトによると、“かつて名勝負、伝説のレース、偉大な記録を生んだ競走馬の名前と魂を受け継いだ『ウマ娘』たちが織りなすクロス
メディアコンテンツ!”とのこと。世間ズレしてブームに乗り遅れた私は詳しく知らなかったのだが、熱心なユーザーである記者仲間に聞くと、実在する名馬を基にしたキャラクターを育成し、レースで活躍させるゲーム(21年にサービス開始)だそうだ。
ゲームに先駆けて漫画やアニメ化もされており、もともと競馬が好きだったファンにとどまらず、それまで競馬に興味のなかった人々もとりこにしている大人気コンテンツ、それが『ウマ娘』である。もちろんトレセン内でも話題になっており、実際にゲームをプレイしている調教師もいたくらいだ。
さて、冒頭の質問の答えはこうだった。「今、牧場志望者の半分以上がウマ娘で競馬に興味を持った人たち。いや、きっかけという意味では、ほぼ全員がウマ娘(から競馬に入った)ですね」。まさに想像以上の影響力-。近年、なり手不足を深刻な問題としていた馬業界の裾野を広げていたのは驚きだった。続けて、「そうそう、馬主さんにもいますよ。ウマ娘から競馬にハマって、実際に馬を持とうと思った方が」と話していた。
大手牧場の重鎮はこう提言する。「ウマ娘の功績はもっと評価されるべきじゃないか」と。JRA馬事文化賞(※)を受賞していないことについても言及した。「ダビスタ(ダービースタリオン)だっていい。ウイニングポストでも、(漫画の)
マキバオーだっていい。こういった、競馬の魅力を世間に伝えたサブ
カルチャーにちゃんと賞を与えるべきだ」と声を上げていた。
もうすぐ記者歴10年目を迎える私も、競馬を覚え立ての頃はダビスタや漫画のじゃじゃ馬グルーミン★UP!にどハマりして、さらに熱中していったものだ。実際にこうして競馬に携わる仕事を生業にできたのだから、当時の競馬ゲームや漫画には感謝しかない。JRA馬事文化賞に限らず、『ウマ娘』のように競馬ブームを作り上げたコンテンツがより評価される機会が来ることを切に願う。(デイリースポーツ・刀根善郎)
※JRA馬事文化賞…87年に創設した賞であり、当該年度において文学、評論、美術、映画、音楽、写真、公演等を通じ馬事文化の発展に特に顕著な功績のあった者に授与するもの=JRAホームページより
提供:デイリースポーツ