忘れられないシーンがある。2016年6月18日の函館開催初日のことだ。藤岡康太騎手は、その年の4月17日の阪神3Rでの落馬負傷から復帰したばかりだったが、最終レースで騎乗した馬がレース中に故障し、再び落馬した。場内は騒然としたが、治療後に姿を見せると人目もはばからず、あるベテラン騎手にすがりつき泣き崩れた。
自身の体も当然、相当な痛みがあったはずなのに、競走生活を断たれた愛馬を思い号泣した。後日、その話を聞いた。「僕が早く気づいてあげられたら、あんなことにはならなかった」。鞍上の愛馬への深い思い入れ、心の優しさに触れた瞬間だった。
関東記者のため、取材する機会は少なかったとはいえ、会えばいつも笑顔を浮かべ真摯(しんし)に取材に対応して頂いた。ありがとうございました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。(
中央競馬担当・松末守司)
スポーツ報知