落馬事故により10日に亡くなった藤岡康太騎手(享年35)の葬儀が15日、滋賀県栗東市の栗東トレーニングセンター厚生会館本館にてしめやかに執り行われた。東西からジョッキー、調教師、馬主など競馬関係者約1000人が参列。供花652基に弔電は92通。早過ぎる別れを惜しんだ。
心地良いうららかな春の日差しの中、式場の方々からすすり泣く音が漏れる。卓抜した騎乗技術に、関係者やファンのみんなから愛された人柄。早世したジョッキーの思い出が、参列者の脳裏に次々と思い起こされた。
幼い頃から動物が好きだった康太さん。兄・佑介さんの背中を追い掛けるように小学5年生から乗馬を始め、騎手の道を志した。喪主を務めた父・健一調教師は「昔は落ち着きのない子でした。『大好きな馬を助けられる獣医になれ』と説得した覚えもある」と振り返る。
危険を伴う騎手の仕事-。わが子を思う父の心配をよそに、息子はたゆまぬ努力を続けてトップジョッキーへの階段を駆け上がった。3月30日にはJRA通算800勝を達成。「夢だった騎手になり、たくさんの人に応援されて大きなレースも勝たせてもらった」。昨年の
マイルCSでは代打騎乗の
ナミュールでG12勝目も挙げていた。
今年はキャリアハイだった昨年の63勝を上回るペースで勝ち星を量産。その折に起きたのが、6日の阪神7Rでの落馬事故だった。プライベートでも、昨年6月に生まれた長男・蓮仁君はまだ生後10カ月と一家の大黒柱としてこれからという時。「調教、競馬終わりに真っすぐ家に帰り、子どもの面倒を見るいい親だった。父を亡くした蓮仁。これからはわれわれ家族が全力で守っていきます」と、かみしめるように言葉を紡いだ。
加療中にSNSで励ましの言葉をくれたファンには、「かわいい自慢の息子。康太が大好きだった競馬、生まれ変わっても騎手になりたいと言っていた競馬を、みんなで愛して応援していただければありがたいです」と声を詰まらせながらメッセージを送った。
康太騎手が人生を懸けた競馬への思いは、これからも受け継がれていく。
提供:デイリースポーツ